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論文記事:地域在住高齢者が転出に至る要因の研究 201805-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第65巻第5号 2018年5月

地域在住高齢者が転出に至る要因の研究

-望まない転出を予防するために-
中村 廣隆(ナカムラ ヒロタカ) 尾島 俊之(オジマ トシユキ)
 中川 雅貴(ナカガワ マサタカ) 近藤 克則(コンドウ カツノリ)

目的 本研究は,地域在住高齢者を対象として転出する前の状況から転出に至った経緯を縦断的に分析して,転出に至る要因を明らかにし,望まない転出を予防する要因の示唆を得ることを目的とした。

方法 調査は2010年と2013年に全国24市町村にて実施した。65歳以上の要介護認定を受けていない地域在住高齢者131,468人を対象に郵送調査を行い,86,005人(回収率65.4%)から回答が得られた。このうち,最長1,374日間(平均1,152日間)追跡ができた81,810人の中から,767人(男性0.84%,女性1.0%)が転出した。身体状況や機能状態,心理・社会的,社会経済的,社会参加,地域環境や外出頻度を自記式質問紙で調査した。Cox比例ハザードモデルを用いて,転出と上記調査項目との関連について,ハザード比と95%信頼区間(以下,95%CI)を算出した。

結果 分析の結果,人口密度が10分の1になるにつれて1.32(95%CI:1.19-1.47)倍の転出をしていた。環境要因では,1人暮らしだと2.22(95%CI:1.85-2.68)倍,等価所得が200万円未満(400万円以上と比較)だと1.35(95%CI:1.00-1.82)倍のリスクがあった。社会参加・活動の要因では,老人クラブに参加していないと2.27(95%CI:1.79-3.53)倍,スポーツの会に参加していないと1.53(95%CI:1.24-2.68)倍,趣味の会に参加していないと1.32(95%CI:1.11-2.87)倍,趣味がないと1.44(95%CI:1.23-1.89)倍のリスクだった。生活状況の要因では,野菜果物の摂取が週1回未満であると2.20(95%CI:1.14-4.24)倍,肉魚の摂取が週1回未満であると1.55(95%CI:1.03-2.34)倍のリスクだった。主観的な要因では,主観的健康感が悪いと1.40(95%CI:1.18-1.66)倍,地域への愛着がないと3.02(95%CI:2.59-3.53)倍のリスクだった。健康状態の要因では,半年以内に体重減少があると1.36(95%CI:1.12-1.65)倍のリスク,過去1年以内に転倒した経験があると1.45(95%CI:1.14-1.85)倍のリスクだった。し好品の要因では,タバコを吸っていると1.39(95%CI:1.05-1.85)倍のリスクだった。疾病状況では,がんの治療中だと1.43(95%CI:1.03-2.00)倍,心臓病治療中だと1.38(95%CI:1.10-1.72)倍,糖尿病治療中だと1.28(95%CI:1.03-1.60)倍のリスクだった。

結論 高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるためには,積極的な社会参加をすること,地域に愛着をもってもらうこと,健康状態が主観的にも客観的にも保たれていること,食事や所得など生活状態が安定していることが示唆された。

キーワード 地域在住高齢者,転出,社会参加,縦断分析,生活状態

 

 

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