論文
第65巻第5号 2018年5月 退院計画に関わる病院スタッフの支援プロセスと
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目的 A病院(回復期リハビリテーション病棟)の自宅退院後調査の取り組みから,入院中には予測できなかった自宅での患者と家族の不安・困り事の把握,および患者の退院計画に対する満足度と生活満足度の評価等を通して,退院計画に関わる病院スタッフによる支援プロセスの不備が,患者アウトカムにどのような影響を及ぼしているのかを示すことを目的とした。
方法 退院後の訪問調査協力が得られた112例が対象である。退院後3カ月経過した日から14日以内の間で患者宅へ訪問し,退院日から退院後3カ月時点までの状況を確認するために,構造化された質問紙を用いた面接調査を実施した。また,調査項目によっては,退院直前(退院までの7日以内の間)または退院時点から退院後3カ月経過時点までの時間経過による変化を捉えることを目的に,退院直前または退院時点のデータを収集した。これらの調査を通じて,対象事例の基本情報,退院計画の中で評価されていた以外の不安・困り事の有無,医療・介護サービス計画の変更箇所数,退院計画に対する患者の満足度,自宅退院後の患者の生活満足度の増減に関するデータを得た。分析は,退院計画に関わる病院スタッフによる支援プロセスと患者アウトカムに関わる変数を投入した重回帰分析を行った。
結果 重回帰分析の結果,以下の3点が示唆された。①退院計画の中で評価されていた以外の不安・困り事があると,医療・介護サービス計画の変更が生じやすい。②上記の不安・困り事や医療・介護サービス計画の変更があると,退院計画に対する患者の満足度が低下しやすい。③退院計画に対する患者の満足度が低いと,自宅退院後の患者の生活満足度が低下しやすい。
結論 退院計画の中で評価されていた以外の不安・困り事の発生,および医療・介護サービス計画の変更といったプロセスの不備が,退院計画や自宅退院後の患者の満足度といったアウトカムの低下につながっている一連の流れを,量的データにより実証的に示すことができた。これにより,退院計画における評価や医療・介護サービス計画の作成を単に行えばいいというわけでなく,その中身が伴っていないと,患者アウトカムの向上につながらない可能性があることを示すことで,病院スタッフ自らの実践を振り返るきっかけになると考える。
キーワード 退院計画,退院後調査,病院スタッフ,支援プロセス,患者アウトカム,満足度