論文
第65巻第6号 2018年6月 重症心身障害児者短期入所の施設種別利用実態-医療型短期入所事業所の全国調査から-平野 恵利子(ヒラノ エリコ) 竹内 文生(タケウチ フミオ) 柏木 公一(カシワギ キミカズ) |
目的 重症心身障害児者(以下,重症児者)の短期入所の実態を明らかにするために,重症児者施設以外の一般病院・診療所,介護老人保健施設(以下,老健施設)を含めて,利用状況等の実態調査を行った。
方法 全国の医療型短期入所事業所388カ所を対象に質問紙調査を行った(調査期間:2016年5月~6月)。調査内容は,回答者属性,受入体制(施設属性,受入条件・取り決め等),受入状況(利用件数,需給状況)だった。単純集計の後,施設種別,利用制度別(医療型短期入所における介護給付とレスパイト入院),重症度別(超・準超重症児とそれ以外)に集計・分析した。
結果 分析対象は234施設(有効回答率60.3%)で,重症児者施設156カ所,一般病院53カ所(診療所3カ所含む),老健施設25カ所だった。重症児者施設も一般病院も,人工呼吸器を含めてほとんどの医療的ケアに対応可能だった。老健施設も呼吸管理が必要な場合を除いては対応可能であるところが多かった。年間利用件数の93%は重症児者施設だった。障害者総合支援法成立の2012年以降,一般病院・診療所や老健施設を中心に参入施設が72カ所(31%)増えているが,ここから回答のあった利用件数は全体の12%だった。2014-15年では41施設(18%)の新規参入があったが,ここから回答のあった利用件数は全体の2%だった。重症児者施設の一部では利用待機者を抱えるほどに申込が集中している一方で,一般病院の27%,老健施設の46%は「新規申込がほとんどない」と答えた。短期入所をレスパイト入院として受け入れる場合がある施設が,一般病院で42%,重症児者施設で24%あり,理由は「検査や処置を生じる可能性があるから」が一番多かった(53%)。利用件数のうちレスパイト入院の占める割合は,一般病院17%,重症児者施設6%,重症度別には超・準超重症児12%,それ以外5%だった。
結論 医療型短期入所事業所として一般病院・診療所,老健施設の参入が増えているが,利用は重症児者施設に集中しており,他施設での受け入れは広がっていなかった。一般病院での受入促進のためには,医療依存度の高い重症児者の受入は医療型短期入所の制度では受入にくい現状があることを踏まえ,医療型短期入所とレスパイト入院の制度・報酬面での差の解消が必要であることが示唆された。
キーワード 重症心身障害児者,短期入所,医療型短期入所,レスパイト入院,介護給付