論文
第65巻第7号 2018年7月 特別養護老人ホームの介護職による
小松 亜弥音(コマツ アヤネ) 岡田 進一(オカダ シンイチ) |
目的 特別養護老人ホーム(以下,特養)の介護職が行う看取り介護に関連する環境要因を実証的に検討することを目的とした。
方法 都市部6都府県の看取り介護加算を算定している特養1,000件を無作為に抽出した。各施設1名の看取り介護の経験があり介護福祉士の資格を持つ介護職1,000名を対象に,自記式調査紙を用いた郵送調査を実施した。有効回答数は166件(16.6%)であった。まず,探索的に設定した「看取り介護に関する介護職ピアサポート」の因子分析を行った。その後,「特養の介護職による終末期高齢者を支える日常的介護実践」の各因子を従属変数,「看取り介護に関する介護職ピアサポート」の各因子と,他職種の看取り介護への姿勢,デスカンファレンス開催頻度,労働環境,性別,年齢,役職を独立変数とする重回帰分析を行った。
結果 「看取り介護に関する介護職ピアサポート」の探索的因子分析の結果,「介護職の同僚や上司による実践面への支援」と「介護職の同僚や上司による情緒面への支援」の2因子が抽出された。重回帰分析の結果,複数の「看取り介護実践」に関連した要因は,「介護職の同僚や上司による実践面への支援」と他職種による「介護職の意見・情報の重視」,そして労働環境の「勤務フロア/ユニット利用者数」であった。
結論 重回帰分析の結果から,介護職の同僚や上司による実践面への支援,他職種による介護職の意見・情報の重視,そして勤務するフロアもしくはユニットの利用者数が関連していることが明らかになり,これらの側面から看取り介護に従事する介護職へのサポートを考えていく必要性が示唆された。また,同職種や他職種に実践が評価されることや重視されることで,介護職は自らの看取り介護への自信や,看取り介護に自らの専門性が役立っているという実感を得ることが明らかになった。
キーワード 看取り介護,特別養護老人ホーム,介護職,労働環境,ピアサポート