論文
第65巻第7号 2018年7月 社会的自立支援に特化した
小室 貴之(コムロ タカユキ) 渡辺 明子(ワタナベ メイコ) |
目的 介護サービス提供によってもたらされた対象者の主体的な選択による社会的活動の再獲得に関連する成果を測定するアウトカム尺度を構築する。
方法 3つの下位尺度「参加」「活動」「主体性」を11項目で測定する社会的自立支援アウトカム尺度を開発し,通所介護施設利用者104名を対象として,その妥当性と信頼性を評価した。分析方法は項目分析,因子分析を用いた構成概念妥当性,判別妥当性,内的整合性と再検査信頼性を検討した。
結果 11項目のうち「運動習慣」が除外対象となった。残る10項目による探索的因子分析で「参加」「活動」にそれぞれ3項目,「主体性」に4項目が当てはまり,この因子モデルによる確証的因子分析のモデル適合度指標は良好な値を得た。下位尺度「主体性」は要介護度による有意な得点差がなく,身体的自立状況に依存しない指標と考えられた。内的整合性と再検査信頼性は良好な値を得た。
結論 質問紙としての自立支援アウトカム尺度の妥当性と信頼性が確認された。要介護度やADLなどの身体的自立指標と異なり,自立支援アウトカム尺度は慢性期や状態悪化に向かう対象者でも良質なサービス提供の成果を測定可能と考えられた。援助者が自立支援アウトカム尺度を対面聞き取りに使用することで,社会的生活の再獲得に向けた可能性発見と援助計画の立案,その達成に向けた方策を共有するためのツールとなると見込まれた。
キーワード 自立支援アウトカム尺度,介護サービス,社会参加,高齢者