論文
第65巻第7号 2018年7月 地域包括支援センターにおける
平澤 園子(ヒラサワ ソノコ) 王 吉彤(オウ キットウ) |
目的 地域包括支援センターにおける地域ケア会議の実施状況の現状と課題を検証することが本研究の目的である。
方法 全国から無作為に抽出した1,604センターの職員を対象に地域ケア会議の実施状況に関する自記式質問紙調査を2016年3~5月に実施し,403件(回収率25.1%)の回答を得た。その中で無効回答が顕著なケースを除く368件を解析対象とした。統計検定にはχ2検定を用い,統計的有意水準は5%とした。
結果 地域ケア会議の実施率は96.2%であり,そのうち検討事項別の地域ケア会議実施状況では,個別事例の検討のみ実施している支援センターが42.1%,地域課題の検討のみ実施している支援センターが4.9%,両方の課題検討を実施している支援センターが49.2%であった。地域独自の課題を検討する地域ケア会議には主に,「介護支援専門員」「行政職員」「民生委員」「介護サービス事業者」「社会福祉協議会職員」が参加していた。地域ケア会議を実施したことによって発見された地域の課題は,「地域で高齢者を見まもるネットワークの不足」「認知症高齢者が利用できる地域資源が少ない」「認知症高齢者家族への支援が不足」「認知症に対する知識と理解の不足」の順に多かった。また,地域課題が検討された場合においては,個別事例の検討だけが行われた場合より,「認知症高齢者家族への支援が不足」が統計的に有意に多く,課題として抽出されていた。
結論 地域課題を検討する地域ケア会議の実施により,「認知症高齢者家族への支援が不足」の課題がより多く抽出されたことは,個別事例検討に加えて地域が抱える課題を検討することにより,認知症高齢者本人だけでなく家族が抱える課題にまで目が向けられたことを意味する。一方,半数以上のセンターでは,個別事例検討のみ実施し地域課題の検討会議を実施しておらず,改善が望まれる。また,「地域で高齢者を見まもるネットワークの不足」「認知症高齢者が利用できる地域資源が少ない」が課題として多く抽出されたことは,地域住民を含む多様な関係者が地域ケア会議に参加することの必要性が示唆された。
キーワード 地域包括支援センター,地域ケア会議,個別課題,地域課題,認知症支援