論文
第65巻第7号 2018年7月 就業している独居高年齢者における日常生活に関する意識の特性鈴木 直子(スズキ ナオコ) |
目的 日本では高年齢者の就業が促進されており,高年齢者の就業者数,就業率が年々増加している。また,独居の高齢者数が増加していることから,就業している高年齢者においても独居が増加していることが推測できる。本研究では,高年齢者の健康を支援する際の一助とするために,就業している独居高年齢者に関する基礎的データを得ることを目的とした。
方法 「平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査」のデータを用い,二次分析を行った。60歳以上の高年齢者で現在就業している644人を分析対象とした。就業している独居の群(以下,就業独居群)と就業している非独居群(以下,就業非独居群)に分類し,属性,健康状態,現在の経済的な暮らし向きの心配,将来の不安,近所付き合い,活動への参加経験,日常生活全般の満足感,生きがい,食生活,情報について比較を行った。
結果 就業独居群は,68人(男性29人,女性39人),就業非独居群は576人(男性359人,女性217人)であった。就業独居群は就業非独居群に比べ,女性の割合が有意に高かった。また,住居の種類では賃貸の割合,現在の経済的な暮らし向きで心配ありの割合が有意に高く,近所付き合いをしたい割合,活動への参加経験の割合,日常生活全般に満足している割合,生きがいを感じている割合,食生活に満足している割合が有意に低かった。食生活について気になる点は,栄養のバランスがとれていない,調理が十分にできない,パックの食品の量が多くむだが出る割合が有意に高く,家族との食事の時間が合わない割合,気になる点が特にないと回答した割合が有意に低かった。情報端末を利用している割合が有意に低く,情報取得の手段として友人,近所の人,ラジオの割合が有意に高く,家族,新聞(タウン紙含む)の割合が有意に低かった。
結論 本研究では,就業している独居の高年齢者は就業している非独居の高年齢者に比べ,日常生活における支援が必要であることが示唆された。就業している現在の状況だけではなく,将来の健康につながる身体・精神・社会面における健康支援が重要と考える。
キーワード 就業者,独居,非独居,高年齢者,高齢者,二次分析