論文
第65巻第8号 2018年8月 都道府県における気分障害の受療率と社会的要因の分析中本 奈那(ナカモト ナナ) 大道 麻依(オオミチ マイ) 北川 明(キタガワ アキラ) |
目的 日本の気分障害患者数は1996年の約43.3万人から増加傾向にあり,2014年には約111.6万人に達した。これまでに気分障害は社会的関連要因があることが指摘されているが,その要因を地域比較から明らかにしたものはない。本研究では,2014年の気分障害の入院,外来受療率について,社会的要因との関係を男女別に分析した。
方法 都道府県別の気分障害の入院,外来受療率は,平成26年の患者調査より得た。社会的要因の25指標は各官公庁の統計資料より得た。気分障害の男女別入院受療率および外来受療率を従属変数とし,25指標のうち指標間の相関係数の高いものを排除した残りの指標を独立変数として,性別,入院・外来受療率別に重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
結果 25指標のうち有意な関係を認めた指標は,入院受療率(男性)で第1次産業就業者比率(β=0.455,p<0.01)と年間日照時間(β=-0.399,p<0.01),外来受療率(男性)で単独世帯の割合(β=0.310,p<0.05),入院受療率(女性)で身体障害者手帳交付割合(β=0.421,p<0.01)と1世帯あたりの負債現在高(β=-0.325,p<0.05)と負債保有率(β=0.367,p<0.01)であった。また,外来受療率(女性)では有意な指標を認めなかった。自由度調整済決定係数は,入院受療率(男性)が0.490,外来受療率(男性)が0.076,入院受療率(女性)が0.526で,外来受療率(男性)では十分な精度が得られなかった。
結論 気分障害と関連する社会的要因として,入院受療率(男性)で第1次産業就業者比率と年間日照時間,入院受療率(女性)で身体障害者手帳交付割合と1世帯あたりの負債保有率,負債現在高が示された。
キーワード 気分障害,社会的要因,都道府県別,受療率