論文
第65巻第12号 2018年10月 患者調査における総患者数の
橋本 修二(ハシモト シュウジ) 川戸 美由紀(カワド ミユキ) 山田 宏哉(ヤマダ ヒロヤ) |
目的 患者調査の総患者数の推計方法について,最近の診療状況の詳しい解析結果によって変更の必要性が結論され,また,具体的な変更案(平均診療間隔の算定対象を現行の30日以下から13週以下へ拡大)が示されている。この新規方法による総患者数について,患者調査以外の情報に基づいて患者数の指標としての妥当性を確認し,その応用として傷病の「総患者数/人口」(総患者の受療率)の年次推移を検討した。
方法 2005~2014年の患者調査を統計法33条による調査票情報の提供を受けて利用し,新規方法による24傷病の総患者数,「総患者数-入院患者数」(総外来患者数)と総患者の年齢調整受療率を算定した。その妥当性を確認するため,国民生活基礎調査の7傷病の通院患者数および文献からの悪性新生物と5部位の5年有病数を用いた。
結果 新規方法による総外来患者数は国民生活基礎調査の通院者数と比べて,5傷病(糖尿病,高血圧性疾患,脳血管疾患,喘息,骨折)で0.88~1.23倍と比較的一致し,慢性閉塞性肺疾患と高脂血症であまり一致しなかった。5年有病数と比べて,悪性新生物と4部位(胃がん,大腸がん,肝がん,肺がん)で0.78~1.25倍と比較的一致し,乳がんであまり一致しなかった。新規方法による総患者の年齢調整受療率は多くの傷病で年次とともに上昇傾向であり,その2014年/2005年の比は糖尿病が男性1.31倍と女性1.20倍,高脂血症が男性1.44倍と女性1.33倍などであり,一方,結核やウイルス肝炎などで低下傾向であった。
結論 慢性閉塞性肺疾患と高脂血症では国民生活基礎調査の通院患者数に,乳がんでは5年有病数に課題があると考えられることから,主な傷病における新規方法による総患者数について,患者数の指標としての妥当性が確認されるとともに,動向把握への応用の有用性が示唆された。
キーワード 患者調査,総患者数,患者数,推計方法,保健統計