論文
第65巻第12号 2018年10月 都道府県別全がん死亡率に及ぼす生活習慣要因の影響度分析-自治体のがん対策の視点から-田辺 和俊(タナベ カズトシ) 鈴木 孝弘(スズキ タカヒロ) |
目的 国の指針「第3期がん対策推進基本計画」(2017~22年度)に盛り込まれなかった死亡率削減の数値目標について,いくつかの都道府県が独自に設定する方針であるとされている。本研究では,自治体の実情を踏まえたがん対策に有用な情報を提供するために,都道府県別の全がん死亡率に及ぼす生活習慣要因の影響度分析を試みる。
方法 平成27年の全がんの年齢調整死亡率の都道府県別データを目的変数とし,24種の生活習慣要因を説明変数とする重回帰分析を行い,全がん死亡率に対して統計的に有意な影響を及ぼす要因を探索し,その影響度を推定した。
結果 47都道府県の全がん死亡率を下げる防御要因としてスポーツ行動者率,がん検診受診率,乳卵類と果物の摂取量の4要因,死亡率を上げる危険要因として健康無関心者率,喫煙率,飲酒率,食塩摂取量の4要因,計8種の影響要因を見いだした。さらに,国内でがん死亡率が突出して高い青森県について要因の影響度を分析した結果,健康意識の向上が死亡率の低下に不可欠であり,そのための方策を提案した。
結論 自治体のがん対策だけでなく,コホート研究や症例対照研究の検討要因についても有用な情報が得られた。
キーワード 全がん死亡率,都道府県差,生活習慣要因,影響度分析,重回帰分析