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論文記事:インフルエンザ定点当たりの患者報告数に関する地域間比較 201810-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第65巻第12号 2018年10月

インフルエンザ定点当たりの患者報告数に関する地域間比較

青野 実(アオノ ミノル) 野﨑 直彦(ノザキ ナオヒコ)
大久保 一郎(オオクボ イチロウ) 後藤 寛(ゴトウ ユタカ)

目的 近年,インフルエンザ定点当たりの患者報告数(以下,患者報告数)を用いて,地域を色別した地図上に流行状況を表示している自治体等が散見される。観測値の集計単位である各地域の定点の数および質が,地域間比較に影響を及ぼすとの考えがあり,筆者らは,ある一定の基準を満たすことで,おおむね良好な地域間比較ができると考えた。県単位や主要都市部の比較,横浜市18区における統計学的分析を行い,患者報告数における地域間比較の可能性について考察したので報告する。

方法 感染症発生動向調査から還元される関東地方や主要都市部(横浜市含む)のデータ,横浜市における定点数や定点医療機関からの報告状況,医師数のデータ,関東信越厚生局(平成28年)の医療機関数,平成22年,27年国勢調査,横浜市ポータルサイトのデータを用いて,統計学的な分析を行った。特に,平成27年国勢調査では,昼間人口や夜間人口の違いに着目して地域間の分析を行った。主な分析方法は,等分散性の検定(Levene検定),Welch検定,一元配置分散分析,多重比較,t検定,正規性の検定(Shapiro-Wilk),単回帰分析である。

結果 患者報告数の最大値や総患者報告数について,関東地方における県単位の地域間比較では,等分散性の検定で有意な差は認められなかった。横浜市における18区の地域間比較では,等分散性の検定で有意な差が認められ,昼間人口が夜間人口より70,000人以上多い2つの区(西区,中区)では,患者報告数が1999年観測以降低値を示している傾向がわかった。また,他の主要都市部でも,平成22年国勢調査において,昼間人口と夜間人口の差が70,000人以上でかつ,昼間人口と夜間人口の比が1.3以上を示している地域では,2006年~2015年シーズンにおける患者報告数の最大値の平均値が低値を示す傾向があり,有意な差が認められた。

結論 県単位の地域間比較では有意な差は認められないが,主要都市部レベルでは,有意な差が認められ,昼間人口の顕著な増加により,2006年~2015年シーズンにおける患者報告数の最大値の平均値が,有意に低値を示す地域があることがわかり,流行状況が過小評価されることに注意する必要があると考える。

キーワード 感染症発生動向調査,インフルエンザ,定点当たりの患者報告数,昼間・夜間人口,統計学的分析

 

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