論文
第65巻第12号 2018年10月 山梨県における中高生の受動喫煙の実態調査岩佐 景一郎(イワサ ケイイチロウ) 渡邊 瑞穂(ワタナベ ミズホ)横道 洋司(ヨコミチ ヒロシ) 山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) |
目的 山梨県における中高生の受動喫煙の実態を明らかにすることを目的とした。
方法 平成28年11月から12月に実施した「子どもの喫煙等母子保健関係調査」において,山梨県下10校の公立中学校の全生徒4,172名と県内すべての全日制高等学校40校より各学年1学級の生徒計4,235人を対象に,無記名の自記式直接回収方式による調査を実施した。
結果 中高生の8,120人より回答が得られ(回収率96.6%),そのうち家族に喫煙者がいる割合は全体の50.8%であった。最近1カ月の間に受動喫煙で不快な思いをした人は51.7%で,家庭内喫煙者の有無により受動喫煙で不快な思いをしている人の割合を比較すると,家庭内喫煙者ありの群の中学生56.9%,高校生58.5%であり,家庭内喫煙者なし群の43.9%,46.9%と比べて有意に高かった(いずれもp<0.01)。受動喫煙の場所については,路上(49.7%),飲食店(41.2%),家庭(36.1%)の順に高く,家庭での受動喫煙の割合については,家庭内喫煙者あり群で有意に高いが,路上,飲食店等における受動喫煙は,家庭内喫煙者なし群で有意に高かった(いずれもp<0.01)。また,家庭内喫煙者あり群の72.7%が家族にたばこをやめてほしいと回答し,15.3%がやめてほしいかどうかわからないと回答した。
結論 中高生の半数以上が受動喫煙で不快な思いをしている現状が明らかになった。家庭内喫煙者あり群の方が,家庭内喫煙なし群に比べて路上や飲食店等における受動喫煙で不快な思いをした割合が有意に低かったことは,家庭内喫煙者あり群において受動喫煙で不快な思いをする閾値が高くなっている可能性が考えられる。よって,受動喫煙による不快感の割合は実際の受動喫煙の被害を過小評価している可能性がある。また,家庭内喫煙者あり群の15.3%が家族に喫煙をやめてほしいかどうかわからないとしていることは,やめてほしい気持ちと家族の行動を否定したくないという気持ちが混在している可能性が考えられる。家族に喫煙をやめてほしいと考えている人が7割を超えることと併せて,子どもたちの健康を守るためには,家庭での喫煙対策が喫緊の課題である。
キーワード 受動喫煙,未成年(中学生,高校生),家庭内喫煙者