論文
第65巻第13号 2018年11月 在宅強化型の介護老人保健施設における自宅復帰の実態中村 豪志(ナカムラ ゴウシ) |
目的 在宅強化型の介護老人保健施設(以下,老健)は,在宅復帰率が50%超でなければならないが,純粋な自宅だけでなく,在宅系施設への退所も在宅復帰に含まれる。在宅強化型老健の自宅退所数がどの程度であるかは明らかにされていない。在宅強化型老健において,純粋な自宅と在宅系施設への退所者数の実態を把握することと自宅復帰を阻害している要因を考察することを目的とした。
方法 公益社団法人全国老人保健施設協会ホームページにて,平成29年4月15日現在で在宅強化型老健である352施設を対象とした。平成28年度の1年間の在宅復帰,加算取得状況,自宅復帰できなかった利用者の要因に関して,郵送による質問紙調査を行った。
結果 有効回答は121通だった(有効回答率34.4%)。総退所者のうち自宅へ退所した利用者数の割合は46.9%だった。また,自宅への退所のみで50%超の要件を満たしている施設は38.8%だった。加算取得状況では,通所リハビリテーションにおける認知症短期集中リハビリテーション等の実施が少なかった。自宅退所できなかった利用者の要因として,家族介護者の介護意欲が十分でないという項目が最も高い指標を示し,利用者の介護意欲がないという項目と比較して有意に高かった。また,利用者の認知機能の低下が2番目に高い指標を示した。
結論 在宅強化型老健は増えているが,自宅退所のみで在宅復帰率50%超の要件を満たしている施設は多くないことがわかった。自宅への退所を促進するために,通所リハビリテーションにおける認知症リハビリテーションの実施,家族介護者への支援が重要だと考えられた。
キーワード 介護老人保健施設,在宅強化型,自宅退所