論文
第65巻第15号 2018年12月 まき網漁船乗組員の長期船内生活が
阿野 忍(アノ シノブ) 久佐賀 眞理(クサガ マリ) |
目的 健康日本21(第二次)では身体活動・運動対策の指標として,「日常生活における歩数の増加」「運動習慣者の割合の増加」が掲げられている。まき網漁船乗組員は東シナ海を主な漁場とするまき網漁船に乗船しており,1カ月のうち約22日間を船内で生活する。出港から帰港まで長期航海を行う乗組員は,陸上生活者とは労働環境,生活条件,ライフスタイルに大きな違いがある。そこで本研究は大中型まき網漁船従業員の下肢パワーと漁船乗組員の船内での身体活動量を測定し,長期の船内生活が身体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
方法 本研究の調査対象をN県内のS水産(株)従業員とした。下肢パワーについては,まき網漁船に乗船している乗組員27人と陸上勤務者である網師6人計33人の下肢パワーを測定し,生活環境による属性で3群に分け,一元配置分散分析と多重比較をTurkyHSDを用いて分析した。身体活動量については,乗組員11人と網師6人に活動量計を7日間装着してもらい,1週間あたりのメッツ・時と1日平均の歩数についてt検定を用いて分析した。
結果 下肢パワーについては労働環境や生活環境による違いが認められた。また,身体活動量については乗組員のメッツ・時/週と歩数が網師のそれに対して有意に低いことが認められた。
結論 身体活動量の低下が及ぼす健康障害予防のため,運動がしやすい船内環境整備が必要であることが示唆された。
キーワード まき網漁船乗組員,網師,長期航海,下肢パワー,身体活動量