論文
第66巻第1号 2019年1月 朝食欠食と血圧の関係-朝食摂取頻度と血圧を報告した20研究のメタ分析-橋本 泰央(ハシモト ヤスヒロ) 岩﨑 陽佳(イワサキ ハルカ)上田 由喜子(ウエダ ユキコ) 小塩 真司(オシオ アツシ) |
目的 朝食摂取の有無によりどの程度の血圧の差がみられるのかメタ分析によって明らかにすることを目的とした。
方法 医中誌,CiNii‚ Medlineから検索式「(朝食or朝食欠食or朝食摂取)AND(血圧or SBP or DBP)」もしくは「((skip breakfast)or(omit breakfast)or(breakfast consumption))AND((blood pressure)or SBP or DBP))」を用いて233本の論文を収集した。そこから⑴大学紀要等を除く査読付き原著論文で,⑵健常者を対象とし,⑶朝食の有無と血圧の関係を調査した,⑷朝食摂取群と朝食欠食群の血圧の平均値の記載がある,⑸参加者間に対応のない論文14本(20研究,朝食摂取群合計27,322人,欠食群合計6,325人)を分析対象とした。効果量には標準化された平均値差dを用い,変量モデルで算出した。効果量の異質性の指標にはQ統計量およびI2を用い,性別,年齢ごとに感度分析を行った。出版バイアスの有無はEgger法とBegg法で検定し,さらにfailsafe Nおよびtrim and fill法を用いて分析結果の頑健性を検討した。
結果 11本(16研究)が朝食摂取群と欠食群を習慣的な朝食摂取の有無で,3本(4研究)が調査当日の朝食摂取の有無で分けていた。収縮期血圧は全体の分析でも,性別,年齢ごとの分析でも欠食群の方が朝食摂取群よりも有意に高かった(全体:d=-0.10,95%CI[-0.15,-0.05];女性:d=-0.07,95%CI[-0.14,-0.01];男性:d=-0.12,95%CI[-0.24,-0.01];18歳以上:d=-0.07,95%CI[-0.13,-0.02];18歳未満:d=-0.14,95%CI[-0.22,-0.06])。効果量間には中程度から高い異質性がみられた。出版バイアスの影響はあっても小さいと推定された。拡張期血圧は全体の分析と女性,18歳未満では欠食群の方が朝食摂取群よりも有意に高かった(全体:d=-0.08,95%CI[-0.12,-0.04];女性:d=-0.08,95%CI[-0.14,-0.03];18歳未満:d=-0.12,95%CI[-0.19,-0.06])が,男性と18歳以上の分析では有意な差はみられなかった。効果量間の異質性は男性では高く,18歳未満では中程度であったが,他は低かった。出版バイアスの影響はあっても小さいと推定された。
結論 朝食欠食群の方が朝食摂取群よりも血圧が高いことが示され,高血圧予防策としての習慣的な朝食摂取の有効性が示唆された。
キーワード 朝食欠食,血圧,メタ分析,効果量,異質性,フォレストプロット