論文
第66巻第1号 2019年1月 介護サービス利用によるその後の
宮原 優太(ミヤハラ ユウタ) 新鞍 真理子(ニイクラ マリコ) 下田 裕子(シモダ ユウコ) |
目的 介護保険の認定審査資料を分析し,在宅生活開始時の介護サービス利用状況と,その後の障害高齢者の日常生活自立度維持期間との関連を明らかにすることを目的とした。また,観察開始年度が平成17年度までと18年度以降とでその関連に相違があるのかを検討する。
方法 平成11年10月から平成29年3月までの期間にT県N郡にて介護認定を受け,更新回数4回以内に自宅での介護認定調査が行われた第一号被保険者から,年齢95歳以上,要介護度3以上,ADLランクB,C,認知度Ⅲ以上の者を除く5,231名分の介護認定審査資料を対象とした。ADL維持期間は在宅生活を開始した時点からADLランクB,Cの記載がある申請情報までとし,最長60カ月で観察を打ち切った。介護サービス利用状況は在宅生活開始の申請情報から把握し,1度でも利用のある者は利用有,1度も利用のない者は利用無とした。性別,年齢階級別,要介護度別,ADL別,認知度別にADL維持期間の25パーセンタイル値をKaplan-Meier法を用いて算出した。次に各介護サービスにおいて観察開始時のADL別に性別,年齢階級,認知度を共変量としたCox比例ハザードモデルを用いて,サービス利用有を基準としたADL悪化のハザード比と95%信頼区間を求めた。通所サービスにおいては,ADLランクがJ2,A1,A2の者を対象にサービス利用有かつ後期(平成18年度以降に観察開始),サービス利用無かつ後期を基準としたADL悪化のハザード比と95%信頼区間を求めた。
結果 各特性のADL維持期間の25パーセンタイル値を求めた結果,すべての特性においてADL維持期間に差を認め,各特性のランクが自立に近いほどADL維持期間は長い結果となった。各特性を調整した結果,通所サービスでは観察開始時ADLがJ2,A1,A2において,サービス利用無群は利用有群に比べてADL悪化のリスクが有意に高く,そのハザード比はそれぞれ1.21,1.49,1.24であった。在宅生活開始年度の前期(平成17年度以前に観察開始)と後期で比較した結果,有意な差は認められなかった。
結論 ADLランクがJ2,A1,A2の者において在宅生活開始時の通所サービス利用がその後のADL維持に有効であることが認められた。在宅生活開始年度の違いを検討した結果,明らかな差は認められなかった。
キーワード 介護サービス,ADL維持,要介護高齢者