論文
第66巻第4号 2019年4月 食事バランスガイド「菓子・嗜好飲料類摂取目安(200㎉/日)」
宮川 淳美(ミヤガワ アツミ) 髙橋 佳子(タカハシ ヨシコ) 古畑 公(フルハタ タダシ) |
目的 第3次食育推進基本計画では,「若い世代を中心とした食育の推進」が重点課題として挙げられている。特に,子育て世代においては次世代の育成のために,適切な栄養摂取や健全な食生活の実践が望まれる。その一方で,若年女性の「やせ」や「菓子の摂取比率の増加」などが問題となっている。また,食生活指針の普及ツールである「食事バランスガイド」では,主食・主菜・副菜のバランスを考慮し,菓子・嗜好飲料類の摂取目安を200㎉/日としているが,その根拠となる調査や研究は少ない。本研究では,菓子・嗜好飲料類の摂取量を200㎉/日とする妥当性について,食事摂取状況と生活習慣から検討することを目的とした。
方法 対象は,平成27年11月~平成28年1月の間で,千葉県松戸市の「1歳6カ月児健診」を受診した幼児の母親とした。簡易版自記式食事歴法質問票(BDHQ)と生活習慣調査票を用いて,菓子・嗜好飲料類の摂取エネルギー量を200㎉/日で群分けし,生活習慣,栄養素摂取量,総エネルギーに占める各食品群のエネルギー寄与率,食事バランスガイドを用いたサービング(SV)数の評価について検討を行った。
結果 食事摂取状況においては,菓子・嗜好飲料類の摂取エネルギー量が「200㎉/日以上の群」では,「200㎉/日未満の群」と比べ,総エネルギー摂取量および菓子類・嗜好飲料類のエネルギー摂取量は有意に高く,菓子・嗜好飲料類のエネルギー寄与率も2倍以上高かった。エネルギー摂取量を補正すると,多くの栄養素摂取量が,「200㎉/日以上の群」で「200㎉/日未満の群」と比べ,有意に少なかった。また,「200㎉/日以上の群」で「200㎉/日未満の群」と比べ,穀類,肉類,油脂類のエネルギー寄与率が有意に低かった。「200㎉/日以上の群」では,「200㎉/日未満の群」に比べ,食事バランスガイドの主食・主菜・副菜のSV数が目安量未満の者の割合が有意に多かった。生活習慣においては,朝食欠食習慣に差は認められなかったが,睡眠時間は「200㎉/日以上群」が「200㎉/日未満群」に比べて,短かった。
結論 菓子・嗜好飲料の摂取エネルギーが200㎉/日を超えると,食事のバランスの偏りを生むだけでなく,生活習慣へも影響を及ぼす可能性が示唆され,菓子の摂取エネルギー量を10%程度(160~200㎉)にすることが望ましいと考えられた。
キーワード 菓子・嗜好飲料類,簡易版自記式食事歴法質問票(BDHQ),食事バランスガイド