論文
第66巻第4号 2019年4月 特定健康診査受診者における
徳留 明美(トクトメ アケミ) 山田 文也(ヤマダ フミヤ) |
目的 医療保険者に義務づけられている特定健康診査は,糖尿病に主眼が置かれている。本研究は,特定健診結果を経年観察し,糖尿病有病者の治療状況と血糖コントロール状況の実態把握を試みたものである。
方法 平成20年度から27年度の埼玉県市町村国保の特定健診受診者を対象として,糖尿病有病率,未治療率(服薬がない者),コントロール不良率(HbA1c 7.0%以上の者)を性・年齢階級別に算出し,経年観察した。また,連続受診者の初年度と次年度の糖尿病有病率,未治療率を観察した。有病の定義は,空腹時血糖126㎎/dL以上,または随時血糖200㎎/dL以上,またはHbA1c 6.5%(NGSP値)以上,または服薬回答に「はい」と回答している者とした。
結果 解析対象者は男173,471-221,309人,女247,973-296,864人,連続受診者は男112,666-158,613人,女169,411-219,422人であった。糖尿病有病率は男14.4-16.7%,女7.8-9.1%で男は女の1.8-1.9倍であり,年齢階級が高くなるに従い有病率は高くなっていた。未治療率は男41.8-49.6%,女42.8-46.8%であり,年齢階級が低いほど未治療率は高かった。服薬者におけるコントロール不良率は男38.2-42.4%,女39.0-44.4%であり,年齢階級が低いほどコントロール不良率が高かった。連続受診者では初年度糖尿病有病で未治療の者の男73.9-76.6%,女72.1-75.3%が次年度も有病であり,それらの者の未治療率は男73.3-75.3%,女72.8-75.6%であった。
結論 本研究の結果,初年度糖尿病有病であり未治療の者の75%が次年度も有病であった。さらに,その有病者の75%は未治療であり,各年度の未治療率を大きく上回っていた。服薬がなく2年連続して有病であった者には,受診勧奨が必要ではないだろうか。検診後のフォローを十分にすることで未治療の者を減らせるのではないかと考える。糖尿病を予防する対策とともに,有病になってしまった者への対策が急務である。本研究結果は,保健事業を計画する自治体の立案,評価の一助になるといえよう。
キーワード 特定健康診査,市町村国保,糖尿病有病率,未治療率,コントロール不良率,連続受診