論文
第66巻第4号 2019年4月 配食サービスを利用する
馬場 保子(ババ ヤスコ) 岡野 茉那(オカノ マナ) 山下 久美子(ヤマシタ クミコ) |
目的 健康における食生活の大切さを自覚している高齢者は多く,高齢者世帯数の増加や医療・介護の在宅化等の流れを受けて,配食市場規模は拡大している。本研究の目的は,配食サービスを利用する地域在住高齢者の食生活の実態と,配食サービス利用後の食生活や健康状態の変化,配食サービスの満足度を明らかにすることである。
方法 地域在住の高齢男女83名を対象に自記式無記名質問紙調査を行った。対象者宅へ訪問の承諾を確認したうえで配食の際に研究者が業者に同行して質問紙の配布を行った。調査内容は,対象の属性と,主観的健康観,食材などの購入手段,食習慣に関すること(食事の回数,間食の有無,外食頻度,食生活への認識と行動),配食サービスの利用状況や満足度,配食サービス利用後の食生活や健康状態の変化,配食サービスに対して望むこと(自由記述)とした。配食サービス利用後の食生活と満足度の関係はSpearmanの順位相関を用いた。
結果 年齢の記載がないデータや65歳未満の男女を除外し,64名を分析の対象とした。平均年齢は78.1±9.14(範囲65-94)歳で,87.6%が週に5~7回配食サービスを利用していた。対象の約8割は,食器の後片付けや生ごみの始末など簡単な動作はできていた。配食サービスを利用していないときは,自分で調理したり,市販の弁当・惣菜で賄っていた。配食サービスによって約8割が,買い物の負担や調理の手間がかからなくなった,栄養のバランスがわかるようになった,と感じていたが,健康状態に関しては,あまり変化がみられなかった。献立・量・味付け・価格・職員の対応ともに約9割の対象が配食サービスに満足しており,「食べる楽しみ」は,献立・味付け・価格・量の満足度と有意に相関がみられた。
結語 対象の約6割は介護認定を受けておらず,6割弱は必要な時に買い物を頼める援助者がいることから,要介護・要支援の前段階の比較的身の周りのことを自身でできる虚弱高齢者が,自身でできることと配食サービスを組み合わせて生活していると思われる。配食サービスは,配達員による安否確認も兼ねており,地域で暮らす高齢者にとって食生活を支える役割を果たしていた。定期的に利用者の献立に関する意見や要望を取り入れる仕組みを作ることでさらに満足度は高くなると思われる。
キーワード 配食サービス,地域在住高齢者,食生活