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論文記事:認知症の要介護者における介護サービスの利用に伴う自己負担額に関する研究 201905-01 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第66巻第5号 2019年5月

認知症の要介護者における介護サービス
の利用に伴う自己負担額に関する研究

-国民生活基礎調査介護票をもとに-
河野 禎之(カワノ ヨシユキ) 山中 克夫(ヤマナカ カツオ) 伊藤 智子(イトウ トモコ)
野口 晴子(ノグチ ハルコ) 高橋 秀人(タカハシ ヒデト) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ)

目的 わが国の社会的課題である認知症について,その介護に伴う経済的な負担を利用者視点から明らかにすることは喫緊の課題である。特に,他疾患との比較や合併症との関連性から現状の負担を明らかにすることは,今後の支援政策を考える上で重要な示唆をもたらす。本研究では,介護サービスの利用に伴う自己負担額に焦点を当て,介護が必要となった主な原因が認知症の場合と,その他の原因の場合との比較から負担の大きさを明らかにすること,また,認知症が他の原因と合併することによる自己負担額への影響について検証することを目的とした。

方法 平成25年国民生活基礎調査のうち,介護票の回答者の結果を用いた。最終的な分析対象者は4,414人(平均年齢83.2±8.5歳,男性1,438人,女性2,976人)であった。介護票の質問項目のうち,介護が必要となった原因および主な原因と,介護サービスの自己負担額,現在の要介護度,介護サービスの種類を分析に用いた。これらの項目から,介護が必要となった主な原因別での介護サービスの自己負担額および種類の比較と,認知症が合併する場合とその他の原因が合併する場合の自己負担額の比較を行った。

結果 介護サービスの自己負担額について2要因分散分析(介護が必要となった主な原因×要介護度)を行った結果,各要因の主効果のみが認められた。具体的には,原因では認知症が他疾患に比べ自己負担額が最も高く,要介護度が高い場合ほど自己負担額が高いことが明らかにされた。また,介護サービスの種類別に比較すると,認知症の場合は特に居住系サービスの利用割合が高くなっていた。さらに,認知症が合併症として重なる場合は,他の疾患が合併するよりも自己負担額が有意に増加し,特に要介護1-3の段階では糖尿病に認知症が合併した場合に自己負担額が最も上昇することが明らかにされた。

結論 認知症は介護サービスの自己負担額を増やし,認知症の本人や家族等に経済的負担を強いる可能性がある。特に糖尿病と合併することにより,その傾向は最も高まることが考えられる。そのため,介護保険制度だけではなく民間の保険制度を含め,重症度に応じて認知症の人の経済的な負担の不均衡を取り除く社会システムや制度を早急に構築する必要がある。

キーワード 認知症,介護サービスの自己負担額,国民生活基礎調査,介護票,合併症,介護保険

 

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