論文
第66巻第8号 2019年8月 女子大学生の隠れ肥満者における
佐藤 亜美(サトウ アミ) 吉村 良孝(ヨシムラ ヨシタカ) 今村 裕行(イマムラ ヒロユキ) |
目的 平成28年国民健康・栄養調査の「身体に関する状況」では,肥満者(BMI25以上)の割合はこの10年でみると男女とも有意な増減はみられないと報告されており,またやせの者(BMI18.5以下)はこの10年でみると女性で有意に増加していると報告している。一見すると若年者の肥満が少ないような印象を受けるが,肥満は「体脂肪の過剰蓄積」と定義されていることからBMIのみならず体脂肪率を測定して肥満を判定することが望ましい。BMIでは正常であるが,体脂肪率30%以上である隠れ肥満については,これまでにいくつか報告されているが十分ではない。本研究の目的は,女子大学生を対象として隠れ肥満者の身体計測値,骨密度,運動器の機能について検討することである。
方法 被験者は特に疾患のない健康な女子大学3年生77名である。被験者の身体計測値,血圧,骨密度を測定した。骨密度はSOS,BUA,スティフネス値,%.YAMを測定した。運動器の機能については,閉眼片足立ち(最高120秒),30秒椅子立ち上がりテスト,握力を測定した。
結果 被験者77名の内訳は,正常群40名(52%),隠れ肥満群24名(31%),肥満群13名(17%)であった。身体計測値では正常群と比較して隠れ肥満群および肥満群の体重,BMI,体脂肪率,除脂肪体重,脂肪量が有意な高値を示した。また,隠れ肥満群と比較して肥満群の体重,BMI,体脂肪率,除脂肪体重,脂肪量が有意な高値を示した。収縮期血圧では,正常群と比較して隠れ肥満群および肥満群が有意な高値を示し,拡張期血圧では正常群と比較して肥満群が有意な高値を示した。骨密度の指標項目では,BUAにおいて正常群と比較して肥満群が有意な高値を示した。その他の項目には有意な差は認められなかった。本研究における運動器の機能の測定結果は,正常群と隠れ肥満群および肥満群との間に有意差は認められなかった。
結論 隠れ肥満のレベルであっても肥満と同様に循環器系への影響が考えられた。一方,隠れ肥満群の運動器の機能の特徴を把握するには至らなかった。若年女性の場合,BMIではやせと判断されても体脂肪率では肥満となる者がいることと,隠れ肥満者の血圧などの特徴をかんがみると,若年女性においては,定期的に身体測定とともに血圧,骨密度などの測定も行って,健康維持増進に留意する必要があると思われた。
キーワード 隠れ肥満,骨密度,若年女性,体脂肪率,運動器の機能