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論文記事:要介護高齢者の介護サービス利用の阻害をめぐる研究動向と課題 201909-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第66巻第11号 2019年9月

要介護高齢者の介護サービス利用の
阻害をめぐる研究動向と課題

-研究論文統計調査-
高木 剛(タカギ ツヨシ)

目的 本研究は高齢者の虐待・判断能力・意思決定などそれぞれ個別の研究テーマで共通して指摘されている,介護の阻害の問題に焦点をあてている。介護サービス利用の阻害の観点から,現行介護保険法の施行以来これまで何がどのように研究され,どのような知見が蓄積されてきたのか,国内の研究動向を明らかにし,今後の研究に示唆を得ることを目的にした。

方法 論文検索システムによりキーワード検索が可能な論文を研究材料にした,研究論文の統計調査である。「高齢者」と「介護」のキーワードが登場する「高齢者・介護論文」を調査の母集団とした。この母集団から「阻害」のキーワードが登場する「阻害論文」を抽出し,阻害が発生した対象者,発生した阻害の原因を調査して年間発表件数を集計した。さらに今後の研究に示唆を得るため,研究分野を区分してどの分野の研究が進み,どの分野で研究が進んでいないのかを確認し,高齢者介護を阻害する問題について今後の研究課題を考察した。

結果 高齢者・介護論文の母集団が14,460件,阻害論文が74件であった。母集団は2000年介護保険法の施行後の6年間4,247件から,2006年以降の12年間10,213件へと論文の蓄積が拡大するなか,阻害論文も16件から58件へと拡大した。阻害論文の割合は有意に増加している。しかし研究分野別に比較すると,医療・保健の分野の有意な増加に支えられた結果であり,介護・福祉の分野の研究は上げ止まりの状態である。医療・保健の分野で阻害の原因に関して利用者本人を原因とする研究が集中する一方,介護・福祉の分野では取り巻く環境を原因とする研究が多数を占めた。介護・福祉の分野での利用者本人を原因とする阻害の研究は,むしろ傾向として衰退に直面している。

結論 介護・福祉分野の研究母数は上げ止まり,介護・福祉の阻害論文は減少の傾向に直面している。とりわけ本人の意識に関わる研究の蓄積が進んでいない。主体的な生活を求める団塊の世代の介護需要拡大に備え,利用者本人の意識に着目したさらなる研究の取り組みが急務であろう。

キーワード 高齢者,介護サービス,阻害,自己決定,尊厳,パターナリズム

 

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