論文
第66巻第12号 2019年10月 単身赴任が身体的・精神的健康および
中田 ゆかり(ナカダ ユカリ) |
目的 一製薬企業で企業戦略により転勤を余儀なくされ,同時期に初めて単身赴任となった労働者を対象に,単身赴任が身体的・精神的健康およびQOLに及ぼす影響について,1年間縦断的に検討することを目的とした。
方法 2012年11月から2013年3月までに初めて単身赴任者となった労働者36名を対象とした。そのうち16名(男性15名,女性1名)から同意が得られ,欠損値のない男性14名を分析対象とした。調査項目は,基本属性として年齢,性別,測定項目としてBody Mass Index(BMI),収縮期・拡張期血圧,唾液アミラーゼ,睡眠効率,自記式質問紙調査項目として,平日・休日睡眠時間,日本版General Health Questionnaire-12(GHQ-12),WHOQOL26を使用した。データ収集は「転勤前」「転勤3カ月後」「転勤6カ月後」「転勤12カ月後」の4回実施した。「転勤前」「転勤3カ月後」「転勤6カ月後」「転勤12カ月後」の各々の数値化されたデータについて反復測定による分散分析を行い,有意差が認められた場合,Tukey法を用いた多重比較を行った。
結果 BMI,収縮期・拡張期血圧,唾液アミラーゼ,睡眠効率,平日・休日睡眠時間,GHQ-12において有意差は認められなかったが,WHOQOL26の「身体的領域」「環境領域」「平均QOL」において有意差が認められた。Tukey法を用いた多重比較によれば,「身体的領域」では「転勤前」と「転勤12カ月後」および「転勤6カ月後」と「転勤12カ月後」で有意差が認められた。また,「環境領域」では「転勤前」と「転勤3カ月後」,「平均QOL」では「転勤前」と「転勤12カ月後」で有意差が認められた。
結論 転勤3カ月後や転勤12カ月後での単身赴任者へのフォローの必要性が示唆された。しかし,本研究では単身赴任者のみを対象とし,対象者数も少なかったため,今後はさらに対象者を増やし,家族帯同者との比較検討や長期的な検討を試みていく必要がある。
キーワード 単身赴任,メンタルヘルス,健康影響,睡眠,QOL,Actiwatch