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論文記事:NSAIDs貼付剤の処方状況に関する調査 202001-02 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第67巻第1号 2020年1月

NSAIDs貼付剤の処方状況に関する調査

-後発医薬品の使用促進と処方制限の視点から-
田中 博之(タナカ ヒロユキ) 石井 敏浩(イシイ トシヒロ)

目的 日本において,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)貼付剤は広く使用されているが,過去のNSAIDs貼付剤の処方状況を調査した報告では,後発医薬品の処方割合が極端に低いことや処方量の地域差などが指摘されている。また,2016年4月の診療報酬改定では,医療資源の効率化や医薬品の適正使用のために外来患者に対する貼付剤の処方が70枚/回に制限された。そこで,本論文では,近年の日本における医療費削減に関する施策である後発医薬品の使用促進や処方制限がNSAIDs貼付剤の処方量に与える影響を検討するとともに,処方量に関連し得る因子を明らかにすることを目的とした。

方法 厚生労働省ホームページで公開されている第2回,第3回レセプト情報・特定健診等情報データベースオープンデータの「薬剤」データより,NSAIDs貼付剤の処方量を調査した。また,得られたデータを処方区分別(「外来(院内)」「外来(院外)」「入院」),薬剤別,先発医薬品-後発医薬品別,年齢群別(非高齢者:0~64歳,高齢者:65歳以上),性別,都道府県別に再集計し,解析を行った。

結果 NSAIDs貼付剤の処方量は2015年度から2016年度の間に5.8億枚以上減少していることが明らかとなり,薬価ベースでの削減額は約273億円であると試算された。薬剤別の処方量は,両年度ともにケトプロフェンが最も多く,次いでロキソプロフェンであった。2016年度におけるNSAIDs貼付剤全体の後発医薬品処方割合は,2015年度と比較して5.9ポイント増加しており,特にロキソプロフェン貼付剤では29.1%から38.2%まで上昇した。年齢群別,性別の検討からは,高齢者および女性でNSAIDs貼付剤を多く使用している状況が明らかとなった。処方量の減少率は,年齢群間には差がみられず(高齢者:△12.3%,非高齢者:△11.7%),性別間では女性で△12.9%,男性で△10.6%と女性で大きくなる傾向がみられた。2016年度には,すべての都道府県で処方量の減少がみられ,また,その地域の高齢化率と処方量との間には正の相関がみられた。

結論 本研究によりNSAIDs貼付剤の処方状況が明らかとなり,近年の日本における医療費削減に関する施策である後発医薬品の使用促進や処方制限の効果が明確になった。また処方量に関連し得る因子として,性別や地域の高齢化率が示唆された。

キーワード 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),貼付剤,処方量,後発医薬品,処方制限

 

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