論文
第67巻第2号 2020年2月 認知症の人の家族介護者(主たる介護者)に対する
菅沼 一平(スガヌマ イッペイ) 南 征吾(ミナミ セイゴ) |
目的 本研究の目的は,認知症の人の家族介護者(主たる介護者)のエンパワーメントを測定するための評価尺度(Empowerment Assessment Scale for Principal Family Caregivers of Persons with Dementia:EASFCD)を開発し,その尺度の妥当性および信頼性を検証することである。
方法 調査対象者は,吹田市,豊中市,京都市,加古川市,北九州市,伊万里市における介護事業所等のサービス利用者の家族介護者(主たる介護者)190名である。調査票については,調査協力に同意した家族介護者に手渡し等で配布を行い,郵送あるいは手渡しでの回収(無記名)を行った。その結果,117部を回収(回収率61.6%)した。尺度の基本的な構成概念の確定のために探索的因子分析を行い,併存的妥当性の検証のために,基準となる標準尺度を用いて相関分析を行った。また,尺度の信頼性の検証を行うために,Cronbachのα信頼性係数を用いた信頼性分析を行った。
結果 45項目のEASFCD試作版は,因子分析の結果,6因子33項目となった。その因子は,因子1(介護への否定的感情),因子2(介護の知識・技術に関する自己効力感),因子3(介護に対する意識・結果・期待),因子4(介護への肯定的感情),因子5(被介護者との関係性),因子6(相談相手の有無と情動的サポート)であり,累積寄与率は57.1%であった。また,基準となる尺度との相関については,中程度(0.3~0.4程度)の負の有意な相関がみられた。因子ごとのCronbachのα信頼性係数は,相談相手の有無と情動的サポート以外は,おおむね0.7以上であった。これらのことから,尺度の構成概念について,基本的な構成概念は検証されたと考える。尺度の基準関連妥当性については,基準となる尺度との関連性がみられたため,基準関連妥当性があると判断でき,因子ごとのCronbachのα信頼性係数も,ある程度の高い数値を示しているため,尺度の内的一貫性(信頼性)があると判断できた。
結論 本研究で開発された尺度(EASFCD)の構成概念については,一部の変更があったが,基本的な構成概念については検証されたと考えられる。また,基準関連妥当性や内的一貫性(信頼性)については検証され,本尺度は,妥当性および信頼性を有する尺度であると言える。
キーワード 認知症の人,家族主介護者,エンパワーメント,尺度開発