論文
第67巻第3号 2020年3月 全国市区町村別にみた自宅死に占める外因死の割合谷口 雄大(タニグチ ユウタ) 渡邊 多永子(ワタナベ タエコ) 翠川 晴彦(ミドリカワ ハルヒコ)太刀川 弘和(タチカワ ヒロカズ) 田宮 菜奈子(タミヤ ナナコ) |
目的 急速に高齢化が進むわが国では,地域包括ケアシステムの構築に向けて在宅医療体制の充実が求められている。その際に考慮すべき重要な課題の1つが看取りの場であるが,現状では国民の多くが自宅で最期を迎えることを希望しているにも関わらず,実際は大半が自宅ではなく病院で死亡している。一方,厚生労働省による「在宅医療にかかる地域別データ集」等の統計や多くの先行研究では,死亡場所が自宅であった死亡すべてを自宅死としてきた。しかし,この定義による自宅死の中には自宅での看取り以外に自殺や孤独死も含まれるため,すべてが望まれた自宅死ではない可能性がある。本研究では,自宅死に占める外因死の割合を全国の基礎自治体別ならびに都道府県別に明らかにし,在宅医療体制の指標として現行の自宅死を用いることの妥当性を検証した。
方法 厚生労働省より提供を受けた2014年人口動態調査死亡票を用いた。全国の基礎自治体における65歳以上の日本人の自宅死数ならびに自宅での外因死数を把握し,自宅死に占める外因死の割合を算出した。
結果 自宅死数が1名以上であった1,700市区町村について,自宅死に占める外因死の割合の中央値(四分位範囲)は6.25(1.99,10.6)%であった。また都道府県別にみた場合,最大値は13.5%(福岡県),最小値は3.66%(和歌山県)であり,自治体間のばらつきを認めた。
結論 在宅医療体制の指標として自宅死数を用いる際は,その中に自宅での看取り以外の死が一定数含まれること,その割合は自治体ごとに異なることに留意する必要がある。またより適切な在宅医療体制の指標として,自宅死全体から外因死を除いた値を用いることも検討すべきである。
キーワード 自宅死,在宅医療,地域包括ケアシステム,外因死,高齢者,指標