論文
第67巻第5号 2020年5月 子育て支援における感染症流行の
細井 菜々美(ホソイ ナナミ) 小林 千幸(コバヤシ チユキ) 畠山 佳織(ハタケヤマ カオリ) |
目的 少子化が進む中で女性の社会進出を促進し,同時に出生率を改善させるためには,子育てと仕事の両立支援を行うことや働き方改革を進める必要がある。子育て支援として求められているものに,子どもの急病(主に感染症)時の対応がある。感染症発生状況の情報共有は保育園関係者のみでの活用にとどまっており,地域の子育て支援には活用されていない。本研究では,地域の子育て支援策に感染症流行のリアルタイム情報を提供することが子育て当事者にとってどのように役立つのか,また予防行動について検討した。
方法 本研究は東京都内のある自治体のファミリーサポートセンターに登録をする利用者を対象とした。センターから登録している会員に配布する会報誌に本調査の依頼書を同封し,感染症流行リアルタイム情報提供の配信希望の登録のあった方にインターネットを用いた無記名のアンケート調査を2018年12月16日から同月26日の期間に実施した。
結果 感染症流行リアルタイム情報提供の配信希望の登録は302名,そのうちアンケート調査の回答者数は40名(回答割合13%)であった。回答者は30代が38%,40代が60%で,ほとんどが女性であった。子どもの通園通学先は保育園が最も多く,次いで小学校であった。子どもの通園通学先での感染症の流行について,園や学校から情報提供がある人が多かったが,その情報が当日のものである人は63%,当日の情報でない人は37%であった。子どものインフルエンザ予防接種の接種状況は,「毎年している」が最も多かった。子どもの体調不良に伴う急な予定変更の可否は,「変更できる」が全体で38%,子どもが保育園にいる保護者で53%,「変更できない」「わからない」が全体で43%,子どもが保育園にいる保護者で48%であった。感染症情報の配信を受けた場合どのようなことに役立ちそうかは,全体と子どもが保育園にいる保護者で差が最も大きかったものは「職場での業務内容調整」で,全体で12人(30%),子どもが保育園にいる保護者で11人(47%)であった。
結論 感染症流行のリアルタイム情報の提供に加えて,ファミリーサポートの利用会員と提供会員の間で情報を共有することにより,さらに子どもを感染症から守るために役立つのではないかと考えられた。今後は地域の多様な子育て支援に関わる人にとって,本研究結果を用いることができるかどうか検討する必要がある。
キーワード ファミリーサポートセンター,感染症,子育て支援,保育園,子ども,感染症流行のリアルタイム情報