論文
第67巻第7号 2020年7月 一人暮らし高齢者に対する
|
目的 本研究では,一人暮らし高齢者に対する支援において,介護支援専門員が感じている困難感についての実態を明らかにした。
方法 調査対象者は,一人暮らし高齢者を担当した経験のある介護支援専門員である。調査対象は大阪府下の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターから2,500カ所を無作為に抽出し,1カ所につき1名の介護支援専門員とし,調査期間は平成31年1月30日~同年2月25日とした。質問紙調査は自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。分析方法は,単純集計と記述統計量を用いた。
結果 回収された質問紙数は909票で,回収率は36.4%であった。介護支援専門員が感じる一人暮らし高齢者支援における困難感は,大きく2つに分けることができる。1つは,「対人支援を進めていく際の困難感」であり,もう1つは,「地域資源の不足による困難感」である。「対人支援を進めていく際の困難感」の代表的な困難感に,一人暮らし高齢者や別居家族の支援拒否に対する対応の困難感があげられ,「地域資源の不足による困難感」の代表的な困難感に,一人暮らし高齢者を支援していく際に重要となるキーパーソンの不在や地域住民に支援を求める際に生じる困難感があげられた。
結論 一人暮らし高齢者を支援していく際,介護支援専門員が感じる困難感を軽減していくための対応策では,一人暮らし高齢者事例に個別性が伴うため,容易な軽減策を見いだすことは難しいが,①地域包括支援センターの主任介護支援専門員によるスーパービジョンや後方支援,②地域ケア会議等の有効活用,③地域資源不足解消のための新たな制度設計や制度の見直し等を組み合わせることで適切な軽減策を見いだすことができると考える。
キーワード 介護支援専門員,支援困難感,一人暮らし高齢者,対人支援,地域資源,支援拒否