論文
第67巻第8号 2020年8月 農林業への関わりと助け合い活動への
服部 真治(ハットリ シンジ) 市田 行信(イチダ ユキノブ) |
目的 中山間地域等の農村部の特徴であり,人的ネットワークや自治活動に密接に関係している農林業の活動に着目し,農林業に関わる地域住民が,それに関わらない地域住民と比較して,どの程度生活支援の意識を持っているかを検証することを目的とした。
方法 鳥取県智頭町において2017年7月に行われた介護予防・日常生活圏域ニーズ調査をもとに,要介護状態でない高齢者2,452人に対し自記式調査票を用いて郵送調査を行った。このうち,年齢と性別に欠損値のない有効回答1,358票(55.4%)を対象として分析を行った。統計的分析は,目的変数を助け合い活動への参加意識,説明変数は農林業への関わりとし,年齢,性別,経済状況,認知機能,身体機能を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った。また,助け合い活動への参加意識の有無と,地域活動への参加状況を分析した。
結果 年齢,性別,経済状況,身体機能,認知機能について調整した上で,助け合い活動(全体・無償)への参加意識と農林業への関わりとの関連を分析した結果,農林業への関わりがある人ほど,助け合い活動への参加意識があるという結果が得られた。また,地域活動のうち,「ボランティアのグループ」「スポーツ関係のグループやクラブ」「趣味関係のグループ」に関し,助け合い活動への参加意識がある群は,参加意識のない群に対し有意に参加者が多いという傾向がみられた。
結論 本研究で,農林業への関与は,助け合い活動への参加意識の高さに関連することが示された。
キーワード 高齢者,助け合い活動,中山間地域,農林業,生活支援,ボランティア