論文
第67巻第13号 2020年11月 都道府県別の女性未婚率の要因分析-自治体の少子化対策の観点から-田辺 和俊(タナベ カズトシ) 鈴木 孝弘(スズキ タカヒロ) |
目的 わが国の近年の出生数低下の最大原因は未婚化の進行にあるとされるが,未婚率には多数の要因が複雑に絡み合っている。そのため,要因解明を試みた研究は多数あるが,未婚要因はいまだに十分に解明されていない。本研究では自治体の少子化対策に有用な情報を得るために,都道府県別の女性の未婚率について非線形重回帰分析により多種多様な指標の中から要因を探索する分析を試みた。
方法 平成27年国勢調査からの47都道府県の女性の生涯未婚率(45歳~54歳)を目的変数とし,各種政府統計から得られる47種の指標を説明変数とし,非線形重回帰分析の一手法であるサポートベクターマシンを用いて,未婚率に対して統計的に有意な影響を及ぼす要因を探索し,さらに,感度分析法により,それらの要因の未婚率に及ぼす相対的影響度を評価した。
結果 都道府県別の女性未婚率に対して有意となる9種の要因を見いだし,そのうち,未婚率を下げる要因は親との同居率,持家率,製造業就業率,交際率,育児休業制度と介護休業制度利用率の6種,未婚率を上げる要因は所得,大学・大学院卒率,医療・福祉業就業率の3種であった。また,親との同居率が未婚率の低下に最大の影響を与える一方,高学歴かつ高所得女性の増加が未婚率の上昇に大きく寄与するという興味深い結果を得た。さらに,これまで未検証の製造業と医療・福祉業の就業率,交際率,育児休業制度と介護休業制度の利用率の5種の要因が有意となった。
結論 女性未婚率の要因として,親との同居率,所得,持家率,大学・大学院卒率などの他に,これまで未検証の要因を含む計9種を見いだし,本研究の解析方法の有効性を実証した。
キーワード 女性未婚率,要因分析,都道府県差,非線形重回帰