論文
第68巻第3号 2021年3月 高齢者の社会参加に関する研究
亀井 美登里(カメイ ミドリ) 本橋 千恵美(モトハシ チエミ) 太田 晶子(オオタ アキコ) |
目的 本研究は,高齢者を含む地域住民の社会参加の意欲や参加実態,住民の持つ専門資格,生活状況,地域への愛着等を把握・分析する。地域包括ケアシステムの構築を進めていく際の重要な社会関係資本としての地域住民の自助,互助,支え合いの可能性とそのあり方を検討する際の有効な基礎資料として役立てることを目的とする。
方法 A市と埼玉医科大学との協働で,A市B地区に在住する30歳以上の全住民1,419人(施設入所者等を除く)を対象とし,2019年11月に,郵送による自記式質問票調査を実施した。質問票の項目は,対象者の基本的属性,専門資格の保有状況,生活状況,地域支援活動の参加意向,地域への愛着等である。
結果 調査票送付数1,419人,回収数543人(回収率38.3%),除外例107人,有効回答数436人(30.7%)であった。地域における高齢者の支援に関する活動に参加意向のある者は全体で255人(58.5%)であった。地域支援活動への参加のきっかけは,男女ともに「知人・友人の誘い」「市などの講習・講座への参加」と答えた者が多く,男では「自治会等を通じての参加募集」が多かった。地域支援活動の参加に期待できることは,「地域や人の役に立つことができる」が最も多く,次いで「地域に知り合いや友達ができる」「自分の健康づくり・介護予防になる」をあげる者が多かった。
結論 A市B地区における地域支援活動参加意向の実態や参加を推進するための重要な因子が明らかになった。今後,地域包括ケアシステムの構築に向けて,地域の前期高齢者等が高齢者を支える地域の担い手として,また行政は地域の活動を促す互助の橋渡しをする立場として機能することで,地域の社会関係資本になり得ることが示唆された。A市の関係する行政計画等に反映されることで,地域包括ケアシステムを補完することが期待される。
キーワード 超高齢社会,地域包括ケアシステム,Social Capital(社会関係資本),地域支援活動,担い手,互助