論文
第68巻第4号 2021年4月 加熱式たばこに関する
仲下 祐美子(ナカシタ ユミコ) |
目的 近年わが国では,加熱式たばこが急速に流行している。本研究の目的は,国内のソーシャルメディアに投稿された加熱式たばこに関する質問の分析により,加熱式たばこや禁煙に対する疑問や懸念を明らかにし,加熱式たばこの流行に対応すべき公衆衛生上の課題を検討することである。
方法 データ収集のソーシャルメディアはYahoo!知恵袋を用い,キーワードは「加熱式たばこ」「新型たばこ」「無煙たばこ」などとした。質問投稿日は,わが国での加熱式たばこ販売開始直後の2014年1月1日から2019年12月31日の6年間とした。分析対象は751件とし,テキストマイニング法による分析を行った。
結果 質問投稿数は2016年以降に増加がみられ,質問投稿者は約4割が加熱式たばこを現在使用しており,約1割は家族や周囲の者が加熱式たばこを現在使用している者,1割弱は投稿者が加熱式たばこを使用希望していた。加熱式たばこ使用希望の中には,紙巻たばこの過去喫煙者や非喫煙者からの投稿もあった。質問文の頻出上位語は「アイコス」「吸う」「たばこ」であり,投稿者が加熱式たばこ使用群では「禁煙」「症状」「悪い」「喉」「体」などが頻出語であり,質問内容は加熱式たばこ使用による体調変化,加熱式たばこの健康影響,加熱式たばこ製品,禁煙に関することであった。家族や周囲の者が加熱式たばこ使用群では受動喫煙の害に関すること,加熱式たばこ使用希望群では加熱式たばこの健康影響に関する質問内容が多かった。「禁煙」に関連する特徴語分析では「アイコス」「思う」「喫煙」の語のほか,投稿者が加熱式たばこ使用群では「変える」「害」「健康」,家族や周囲の者が加熱式たばこ使用群では「悪い」「健康被害」「子ども」,加熱式たばこ使用希望群では「検査」「治療」「病院」などが関連語であった。
結論 分析の結果,加熱式たばこの健康被害や健康影響,受動喫煙の害に関する疑問や懸念が多く,健康影響が解明されるまでは,加熱式たばこが安全ではないことや受動喫煙により健康被害の可能性があることを情報提供する必要性が示された。一方,加熱式たばこ使用への関心は,紙巻たばこの過去喫煙者や非喫煙者にもみられたことから,禁煙者に再喫煙させない,非喫煙者には手を出させないようにする必要性が示唆された。禁煙に関しては,加熱式たばこをやめる方法や紙巻・加熱式たばこ併用者から禁煙方法について意見を求めているものがみられ,たばこの多様化が進む中で効果的な禁煙促進の検討が重要な課題である。
キーワード 加熱式たばこ,禁煙,ソーシャルメディア,内容分析,健康影響,情報提供