論文
第68巻第5号 2021年5月 児童発達支援ガイドラインが推奨する
植田 紀美子(ウエダ キミコ) |
目的 2017年に厚生労働省により児童発達支援ガイドライン(以下,ガイドライン)が制定され,児童発達支援の質の向上に向けた取り組みが望まれている。ガイドライン制定直前における,ガイドラインが推奨する発達支援内容の取組状況の実態を明らかにすることを目的とした。
方法 全国の児童発達支援および医療型児童発達支援を行うすべての施設4,030カ所(2015年4月時点)に対して,記名式自記式質問票を用いた郵送調査法による実態調査を行った。調査内容は,発達支援内容,発達支援を提供する際の配慮などである。記述統計を行い,各項目について「積極的に取り組んでいる」割合が障害種別によって差があるかを統計学的に比較した。
結果 利用契約児の主たる障害状況に関して回答のあった836施設を解析対象とした。重症心身障害がある子ども(重心児)が主として利用する施設が90施設,肢体不自由がある子ども(肢体不自由児)が主として利用する施設が42施設,知的障害がある子ども(知的障害児)が主として利用する施設が324施設,発達障害がある子ども(発達障害児)が主として利用する施設が372施設,難聴がある子ども(難聴児)が主として利用する施設が8施設であった。重心児が主として利用する施設では,「健康状態を把握するための支援」「日々変化する健康状態に適切に対応するための支援」「生活リズム獲得のための支援」「感覚遊び」「歌遊び」に積極的に取り組んでいた。肢体不自由児や知的障害児が主として利用する施設では,「清潔,食事,着脱,排泄など生活習慣に関する支援」に積極的に取り組んでいた。発達障害児が主として利用する施設では,「友達との関わりを重視した支援」「役割を与えた活動の提供」「代替のコミュニケーションを用いた支援」に積極的に取り組んでいた。「地域社会との連携」を積極的に取り組む施設は少なかった。
結論 ガイドライン制定直前の児童発達支援センター等において,ガイドラインが推奨する発達支援内容の取組状況の実態を明らかにした。今後,ガイドラインの普及状況をモニタリングする上で重要と考える。各施設が積極的に取り組んでいる課題や配慮は,障害種別を反映した結果になっていた。子どもの成長や発達を促すためには,障害特性や発達過程に応じた支援の提供が重要であり,児の成長・発達に応じて,支援内容を定期的に見直すことが必要である。
キーワード 児童発達支援ガイドライン,障害児,発達支援,児童発達支援センター,実態調査