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論文記事:離島・へき地における終末期ケアの現状と多職種連携 202105-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第5号 2021年5月

離島・へき地における終末期ケアの現状と多職種連携

馬場 保子(ババ ヤスコ) 横山 加奈(ヨコヤマ カナ) 今村 嘉子(イマムラ ヨシコ)
赤水 れみ子(アカミズ レミコ) 坂本 雅俊(サカモト マサトシ)

目的 住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,終末期の過ごし方について比較的元気なうちから家族や多職種で共有することが必要である。人口規模や地域特性,在宅療養支援を行う職種によって,終末期ケアの実施状況や多職種連携行動が異なるかを明らかにした。

方法 調査対象は,東京都,愛知県,長崎県の1,013カ所2,026名(医師400名,訪問看護師426名,保健師400名,社会福祉士400名,介護支援専門員400名)に自記式質問紙調査を行い,調査期間は2019年8月~9月末とし郵送法にて回収した。調査内容は,基本属性の他に,担当地域の人口区分・地域区分,終末期ケアの実施状況,終末期ケアシステムの現状,在宅での看取りを困難にする要因,多職種連携行動尺度であった。『離島・へき地』『離島・へき地ではない』の2群間でマンホイットニーU検定を用いて比較し,多職種連携行動尺度の各因子について平均値を算出し,人口区分,職種でクロス集計を行い,全体の得点平均値を比較し傾向を把握した。

結果 対象者の505名から回答が得られた。終末期ケアの実施状況について,医師,訪問看護師の9割以上は実践経験があった。社会福祉士は終末期ケアの実践経験がある割合は低いが,患者の終末期の過ごし方に対する思いを知る機会は,介護支援専門員や保健師よりも高かった。終末期ケアシステムは,『離島・へき地』のほうが有意に整っていなかった。在宅での看取りを困難にする要因は,マンパワー不足,地理的に訪問困難な地域が多い,病院スタッフに在宅移行の視点がない等であった。在宅での看取りの困難さは,人口5万人未満と5万人以上の地域で境界があり,人口が少ないほうが困難であった。しかし,人口5千人未満の『離島・へき地』では,マンパワー不足や24時間の支援体制構築は困難であるが,医師の在宅での看取りの関心が高く,病院スタッフに在宅移行の視点が高く,医師の多職種連携行動が高いという特徴があった。

結論 離島やへき地で最期まで過ごすためには,地域の医療資源の活用だけでは限界がある。『離島・へき地』の医師が,在宅での看取りへの関心が高いことや多職種連携行動が高いことを活かすだけでなく,地域の強みを活かした疾病予防,介護予防に着目してアプローチすることが必要である。地域のニーズを把握している専門職は,地域住民に対して,比較的元気なうちから“人生の最後をどう過ごしたいか”意思決定支援を行うことなどのアドバンスケアプランニングを推進していくことが望ましい。

キーワード 離島・へき地,終末期ケア,看取り,多職種連携,地域の強み

 

 

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