論文
第68巻第5号 2021年5月 家庭内ケアと健診未受診との関連:国民生活基礎調査より鈴木 有佳 (スズキ ユカ) 本庄 かおり(ホンジョウ カオリ) |
目的 子育てと介護の両方を行うダブルケアを含む家庭内ケアを担う者の数が増加している。ダブルケアは家庭内ケア提供者に多くのニーズによる負担を与え,家庭内ケア提供者の健康診断(健診)受診を阻害する可能性がある。しかし先行研究では,家庭内ケアの組み合わせによる家庭内ケアの種類と健診未受診の関連については検討されていない。そこで本研究では,2013年国民生活基礎調査データを用い,家庭内ケアの種類と健診未受診の関連について検討を行った。
方法 2013年国民生活基礎調査データを用い,40-59歳の婚姻経験のある女性71,065名を対象とし,解析を行った。家庭内ケアの種類(ケアなし,子育てのみ,介護のみ,ダブルケア)による過去1年間の健診未受診のオッズ比(odds ratio:OR)をロジスティック回帰分析により推定し,さらに就業の有無によるサブグループ解析を実施した。
結果 子育てのみ群,介護のみ群,ダブルケア群の基本属性と社会経済的要因を調整した健診未受診のORは,ケアなし群と比較し,それぞれ1.09(95% CI:1.05-1.14),1.07(95% CI:0.99-1.16),1.49(95% CI:1.31-1.69)だった。ダブルケア群では子育てと介護の両方を行うことにより,健診未受診の追加リスクが生じていた。また,就業の有無によるサブグループ解析の結果,子育てと健診未受診の関連は就業の有無で異なったが,介護ならびにダブルケアと未受診の関連は就業の有無で変わらなかった。
結論 本研究は子育て,特にダブルケアを担う女性は,健診未受診割合が高いことを明らかにした。子育てやダブルケアを行う女性は,自身の健康管理についての優先順位が低い可能性や,健診受診に際して子どもやケアが必要な家族の預け先を見つけることが難しかった可能性が考えられる。健診実施率向上のためには未受診者の家庭内ケアの状況を把握し,それに対応した支援を実施することの必要性が示唆された。
キーワード ダブルケア,介護,子育て,家庭内ケア,特定健診,未受診