論文
第68巻第6号 2021年6月 医療系学部の未成年非喫煙学生における
薬司 理紗(ヤクシ リサ) 小林 沙妃(コバヤシ サキ) |
目的 近年,急速に普及する新型タバコは,若年非喫煙者の喫煙へのゲートウェイとなる可能性が懸念されているものの,新型タバコの使用防止策について検討した研究は限定的である。本研究では,医療系学部の未成年非喫煙学生の新型タバコに対する意識を調査し,紙巻タバコに対する意識との差異を検討することにより,未成年非喫煙学生に対する効果的な新型タバコ対策の示唆を得ることを目的とした。
方法 研究デザインは単施設における横断研究である。A大学医療系学部1~2年次生の非喫煙学生224名をリクルートし,2018年8月に無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は,基本属性(5項目),心理的ストレス反応(18項目),新型タバコと紙巻タバコに対する意識(知識:6項目,肯定的な認識:6項目,否定的な認識:4項目,周囲の環境:4項目の計20項目)とした。基本属性による変数間の関連にはFisherの正確確率検定を,新型タバコと紙巻タバコに対する意識の各得点の比較にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。
結果 分析対象は未成年非喫煙学生113名(有効回答率50.4%)であった。全対象者では,「タバコは使用者の身体に害があると思う」などの知識に関する6項目,「タバコの使用者に不快感を持つ」などの否定的な認識に関する4項目,「タバコの入手方法を知っている」の周囲の環境に関する1項目の得点について,新型タバコの方が紙巻タバコよりも有意に低かった。性別による比較分析の結果,女子学生では「タバコは肌荒れの原因になると思う」などの知識に関する6項目の得点について,新型タバコの方が紙巻タバコよりも有意に低かったが,男子学生では有意な差は認められなかった。
結論 本研究の分析対象者においては,新型タバコは紙巻タバコに比べて,1)タバコによる健康への影響は小さい,2)タバコそのものや使用者に対する嫌悪感・不快感を抱きにくい,3)やけどの危険性が低い,4)経済的な負担が軽い,と受け止められていた。これらの結果には新型タバコに関する正しい知識や情報が不十分であることが影響していると推察され,今後は未成年非喫煙学生に対して,エビデンスに基づく新型タバコの正しい情報の発信と普及の必要性が示唆された。また,性差による得点の差異が認められたことから,関心の寄せ方などの性差に配慮した新型タバコに関する情報の発信方法を検討する必要があると考える。
キーワード 未成年,大学生,非喫煙者,新型タバコ,紙巻タバコ,意識