論文
第68巻第7号 2021年7月 山梨県における救急搬送患者の
小林 克也(コバヤシ カツヤ) 大岡 忠生(オオオカ タダオ) 山縣 然太朗(ヤマガタ ゼンタロウ) |
目的 山梨県の救急医療体制における搬送先の選定時間に関わる要因を明らかにし,救急車内収容から病院決定までを短縮し救命率の向上に寄与することを目的とした。
方法 研究デザインは観察研究であり,研究対象は2018年4月1日から2019年3月31日までで山梨県内の消防本部に登録された救急搬送傷病者データ25,361例のうち,欠損値を除外した15,180例を集計対象とした。さらに,そのデータを用いて救急搬送時において搬送先医療機関の決定のための連絡開始から搬送先医療機関の決定までにかかる時間に関連する要因に関して,単回帰・重回帰それぞれの分析を用いて解析した。
結果 集計調査からは,覚知(傷病者発生を認知した)月,年齢分類,事故種別,疾患分類,傷病程度,Cardiopulmonary arrest(心肺停止)(以下,CPA)判定において,分類ごとに平均搬送先医療機関の決定時間の差が認められた。また,重回帰分析においても,季節,事故種別,疾病分類,傷病程度において有意差が認められた。曜日,平日と土日・祝日と連絡時間帯において,搬送先決定にかかる時間に差はなかった。
結論 山梨県における救急搬送時の搬送先医療機関の決定時間は,季節や傷病・事故の種類による違いは見られたが,時間帯や平日,土日・祝日とで明らかな差は認められなかった。今後,意識の有無やかかりつけ病院の有無などの因子を考慮した検討や患者の転帰との関連についてはさらなる検討が必要である。
キーワード 救急搬送,搬送時間,救急医療体制,搬送先医療機関の決定時間