論文
第68巻第7号 2021年7月 虐待ハイリスク家庭に対する
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目的 本研究の目的は,虐待の恐れがある家庭に対して,保育士がその発生予防や養育の改善に向けた機能発揮を促進する要因を明らかにすることにある。子ども虐待対策において保育所の機能が注目される中,子ども虐待予防や早期介入のために保育所における発見・共有・連携の促進に向けた課題を明らかにすることには,大きな意義がある。
方法 調査票は調査協力関係を結んだA市児童福祉担当課を介して,A市内16の公立保育所に勤務する保育士を対象としたアンケート調査を実施した。配票数は300とし,調査対象の地域特性に偏りが生じないよう各地域の利用児童数に基づいて配票数をあん分した。調査票の回収数は210ですべてを有効票として集計した。回収率は70.0%である。調査期間は2019年11月6日から12月20日であった。
結果 保育士が子ども虐待に早期対応ができていると評価することに影響するものは,1点目に保育士自身の従業上の地位や勤務環境である。2点目に虐待対応のマニュアルや発達に課題のある子どもへの対応マニュアルの整備,ヒヤリハット対応の仕組み,研修機会の確保など,ハイリスク家庭への支援について組織的なマネジメント体制である。3点目に保護者への対応について同僚や上司に相談しやすいことや保育士ひとりに責任を押しつけないスーパーバイズの体制整備である。
結論 虐待の恐れがある家庭に対して,保育士が子ども虐待の発生予防や養育の改善を促進するには,保護者のモニタリング機能や支援機能が発揮されることが重要である。そのためには,経験年数の長い非正規雇用の保育士や経験年数の少ない正規雇用の保育士がともに保育所内での認識共有や無理や不安なく要支援世帯とかかわれるよう支援環境の整備が必要と言える。加えて管理職のみならず全保育士へ要保護児童対策地域協議会をはじめとする他機関連携の促進について早急な対応が求められる。
キーワード 虐待,保育士,連携,保護者支援,要保護児童対策地域協議会,マネジメント