論文
第68巻第7号 2021年7月 高齢者のエンド・オブ・ライフに対する態度尺度の開発辻本 耐(ツジモト タイ) 川島 大輔(カワシマ ダイスケ) 田中 美帆(タナカ ミホ) |
目的 エンド・オブ・ライフ(EOL)の充実に向けた基礎研究として,高齢者のEOLに対する態度を測定するための尺度を作成し,その信頼性と妥当性について検討することを目的とした。
方法 終末期医療・介護・葬儀・お墓・自らの人生の記録などEOLに関する14項目を作成し,文章で意思表示している場合(Advanced Directives:AD)と身近な人と話し合っている場合(Advanced Care Planning:ACP)の2つに分けて回答を求めた。対象者は,2018年1月にシルバー人材センターに登録している高齢者の男女167名であった。最終的に,回答に不備のなかった156名を分析対象とした(有効回答率93%)。尺度の内的構造を確認するために探索的因子分析を実施し,Cronbachのα係数を算出することで信頼性の検討を行った。そして,死に対する態度尺度および対人関係欲求尺度に加え,書字習慣および死に関するコミュニケーション能力を測定するための項目を新たに作成し,EOL尺度との相関分析を行うことで基準関連妥当性の検討を行った。
結果 探索的因子分析の結果から,ADにおいて「死後の儀礼と手続きおよびケアの希望」と「人生の意味」の2因子構造,ACPにおいて「死後の儀礼と手続き」と「人生の意味」,そして「ケアの希望」の3因子構造が確認された。信頼性の検討を行ったところ,各下位尺度のα係数は0.81~0.89であり,基準関連妥当性のために行った外的基準との相関分析では,弱から中程度(-0.16~-0.27,0.16~0.34)の有意な相関係数が認められた。
結論 EOLに対する態度尺度は,ADで2つの下位尺度,ACPで3つの下位尺度から構成され,十分な信頼性と一定の妥当性が確認された。この開発された尺度によって,わが国の高齢者のEOLへの態度の実態をより明らかにすることができると考えられる。
キーワード EOL(エンド・オブ・ライフ),高齢者,死,準備,態度,意思表示