論文
第68巻第11号 2021年9月 季節調整法を応用した
有田 帝馬(アリタ テツマ) |
目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の報告日別の新規陽性者数は,感染状況を判断する上で重要な指標である。そのトレンド(傾向・循環変動)をとらえる上で週単位の周期性や休日の影響が阻害要因となっている。経済統計の分析で利用される季節調整法を応用し,これらの阻害要因を分離できないか検討した。
方法 全国および東京都の報告日別の新規陽性者数の日次データ(2020年3月下旬~2021年2月上旬)を対象に,主要な季節調整法であるX-12-ARIMAプログラムの一部プロセスを日次データでも適用できるように修正したものを利用し,新規陽性者数の変動を,トレンド,暦による変動(週単位の周期性および休日の影響),不規則変動(一時点の要因による変動)に分離することを試みた。
結果 季節調整法の応用により,トレンド,暦による変動,不規則変動の分離に成功した。新規陽性者数の変動は前日比で約15%内のトレンド,週単位の周期性の約-30%~10%の振れ,不規則変動による約15%の振れで構成されることが確認された。
結論 本分析で行った季節調整法の日次データへの応用は,報告日別の新規陽性者数のトレンドを早期かつ的確にとらえるための有力な手法になると考えられる。
キーワード 新型コロナウイルス感染症,COVID-19,新規陽性者数,変動分析,季節調整法,X-12-ARIMA