メニュー

論文記事:周術期における術後せん妄アセスメントシートの検討 202109-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

m header btn

一般財団法人 厚生労働統計協会

サイトポリシープライバシーポリシー

pmark     お問い合わせ

論文

論文

第68巻第11号 2021年9月

周術期における術後せん妄アセスメントシートの検討

野末 波輝(ノズエ ナミキ) 斉藤 理恵(サイトウ リエ)
鷲見 由紀子(スミ ユキコ) 藤原 美樹(フジワラ ミキ)

目的 せん妄は病棟の種類を問わず入院患者の1割程度に発症している。急速に高齢化が進行しているわが国においては,今後ますます,せん妄患者が増加することが予想される。また,外科学の進歩に伴い高齢者が手術を必要とする疾患に罹患することも多くなると推測され,高齢者手術で最も多い合併症である術後せん妄の発症も増加すると予測される。術後せん妄は,患者の生命に大きな影響を及ぼすだけでなく,医療スタッフの負担となりマンパワー不足にもつながる。そのため,術後せん妄のリスクをアセスメントし,早期からの予防的介入に組織的に取り組むことは重要である。本研究では,当病棟で使用している簡便な術後せん妄アセスメントシートのリスク因子と因子数の妥当性を検討した。

方法 対象者は2019年6月~2020年3月までの手術予定患者301名とした。入院時,担当看護師が術後せん妄アセスメントシートを記載し,後日研究メンバーによってシートの回収を行った。その他関連因子については,研究メンバーによって情報取集した。各調査項目と術後せん妄の有無についてχ2検定を行った。カットオフ値を算出し,感度,特異度を算出,ROC曲線を作成した。

結果 調査項目のうち,年齢,要支援または要介護認定あり,日常生活自立度A以下,開腹手術,認知症ありまたはMMSE24点以下,脳血管障害の既往あり,ICU入室あり,抗精神病薬の定期内服あり,視覚,聴覚障害ありと術後せん妄に有意な関連がみられた。術後せん妄アセスメントシートのカットオフ値を2項目に設定した時の感度は,94.0%,特異度は76.5%であった。

結論 調査項目と術後せん妄の有無については過去の先行研究とおおむね一致した結果であった。術後せん妄アセスメントシートの感度,特異度が最大となるカットオフ値は2点であったことから,2項目以上にチェックの入る患者にはより注意して介入を行っていくことが必要である。今後も術後せん妄患者は増加することが予想されるため,せん妄予防の取り組みがより重要となると考えられる。

キーワード 術後せん妄,周術期,術後せん妄アセスメントシート,術後せん妄リスク因子

 

論文