論文
第68巻第11号 2021年9月 小規模多機能型居宅介護における認知症の人を支える
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目的 認知症の人を支える家族介護者への心理的支援に関する先行研究では,通所介護を主に訪問介護と短期入所介護の組み合わせ,つまり,小規模多機能型居宅介護の仕組みが有効としている。しかし,小規模多機能型居宅介護を対象とした有効性の検証はほとんどない。そこで本研究は,小規模多機能型居宅介護の専門職を対象に質的研究を行い,専門職の客観的観点から認知症の人を支える家族介護者の心理的支援の有効性に関する要因を明確にすることを目的とした。
方法 小規模多機能型居宅介護における,認知症の人を支える家族介護者の心理的支援の有効性を検討するために,2019年8月から2019年9月に調査を行った。全国における小規模多機能型居宅介護事業所の中で14カ所の専門職14人を対象に質的研究を実施した。調査方法は,半構造化面接によるインタビューの方法で実践体験や事例を自由に語ってもらった。分析にはテキストマイニング手法を行った。
結果 分析の結果,『安心した地域生活の連続』『理解を得る持続的な説明』『柔軟性に富んだサービス』『最期を支える』『臨機応変な支援』『認知症と家族の相互作用による関係性』『心理的支援への取り組み』『変化する状況へのアプローチ』という8つの有効な要因が示され,小規模多機能型居宅介護は併設型か,単独型かによって支援や関わり方の内容が一部異なっていることが明らかにできた。
結論 小規模多機能型居宅介護は他の在宅サービスと比べて緊急時の利用が可能で臨機応変な対応ができることと,いつでも支援を求めることが可能な接近性が容易であること,利用者のニーズによってサービスを組み合わせることができること,認知症の人と家族が必要な時に専門職から相談できる体制になっていること,看取りを支えることで人生の最期まで安心して住み慣れた地域で生活することができて,心理的安定にもつながっていた。
キーワード 認知症の人,家族介護者,心理的支援,小規模多機能型居宅介護,専門職