論文
第68巻第11号 2021年9月 後期高齢者率の高い地区と低い地区における
泉 眞知子(イズミ マチコ) 池田 直隆(イケダ ナオタカ) |
目的 本研究は,後期高齢者率の高い地区と低い地区における住民ボランティアによる独居高齢者への見守り活動状況を比較することを目的とした。
方法 大都市近郊である大阪府寝屋川市の住民ボランティア全数である1,812名に対して自記式質問紙配布による調査を実施した。調査項目は,基本属性や見守り活動状況として,住民ボランティアが実施している見守り活動の対象者数と見守り関連活動の実施頻度を把握した。同市24小学校区において,2017年の全国の平均後期高齢者率である13.8%を基準として,後期高齢者率が13.8%以上の17小学校区を後期高齢者率が高い地区,13.8%未満の7小学校区を後期高齢者率の低い地区とした。後期高齢者率の高い地区と低い地区における住民ボランティアの基本属性,見守り活動の対象者数と見守り関連活動の活動頻度の違いについて,χ2検定により検討した。
結果 有効回答数は764名(42.2%)であった。基本属性は,後期高齢者率の高い地区の住民ボランティアは低い地区の住民ボランティアに比べて,ボランティア自身が75歳以上の者(p<0.05),男性(p<0.001),暮らし向きに余裕がある者(p<0.05),無職者(p<0.05)の割合が高かった。住民ボランティアの見守り活動の対象者数については,後期高齢者率の高い地区では低い地区に比べて,声かけ(p<0.05),ポストや明かりの確認(p<0.01),戸別訪問(p<0.01)の対象者数が0人である者の割合が高かった。一方,見守り関連活動は,後期高齢者率の高い地区の住民ボランティアは低い地区の住民ボランティアに比べて,会食・サロン・喫茶運営を実施していない者の割合が低かった(p<0.01)。
結論 本研究の結果より,後期高齢者率の高い地区では低い地区と比べて,住民ボランティアが実施している声かけ,ポストや明かりの確認,戸別訪問などの見守り活動は頻繁に行われていない一方,会食・サロン・喫茶運営などの見守り関連活動は活発に行われている可能性が示唆された。このことより,後期高齢者率の高い地区にあっても住民ボランティア自身の体力や意欲に応じたボランティア活動を継続していると考えられる。
キーワード 後期高齢者率,住民ボランティア,独居高齢者,見守り活動