論文
第68巻第11号 2021年9月 共働き世帯における母親の
細川 陸也(ホソカワ リクヤ) 桂 敏樹(カツラ トシキ) 平 和也(タイラ カズヤ) |
目的 近年,子育て世帯における共働きの割合は増加傾向にある。しかし,共働き世帯を支える社会システムの整備はいまだ不十分であり,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進は重要な課題となっている。親のワーク・ライフ・バランスは,子どものメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性がある。本研究は,共働き世帯における母親のワーク・ライフ・バランスと学童期の児の社会適応との関連を明らかにすることを目的とした。
方法 2019年10~12月に,愛知県内の小学5年生(10-11歳児)とその養育者1,414名を対象に自記式質問紙調査を実施した。主な調査項目は,親の雇用形態,家庭の世帯収入等とし,ワーク・ライフ・バランス尺度(Survey Work-Home Interaction-NijmeGen),児の社会適応(Child Social Preference Scale)尺度などを用いた。目的変数を児の社会適応,説明変数を母親のワーク・ライフ・バランス,調整変数を性別,家族構成,親の雇用形態,家庭の世帯収入として重回帰分析を行った。
結果 有効回答の得られた709名のうち,基準を満たす共働き世帯の児443名を分析対象とした。分析の結果,仕事から家庭へのネガティブな影響が大きいほど児の社会不適応のリスクが高くなる(シャイネス:β=0.180,p<0.001,社会的無関心:β=0.149,p=0.003)一方,仕事から家庭へのポジティブな影響が大きいほど社会不適応のリスクが低くなる(シャイネス:β=-0.130,p=0.008)傾向がみられた。
結論 母親のワーク・ライフ・バランスは,ネガティブな面でもポジティブな面でも,児の社会適応に関連していることが示唆された。仕事と子育てを両立するための積極的な取り組みは,児の社会適応にとって重要であると考える。
キーワード 共働き世帯,母親,ワーク・ライフ・バランス,学童期,社会適応