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論文記事:子ども虐待と子育て不安や就学前親子のニーズとの関連性 202110-03 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第12号 2021年10月

子ども虐待と子育て不安や就学前親子のニーズとの関連性

-岡山市の就学前親子の居場所に関する調査より-
八重樫 牧子(ヤエガシ マキコ)

目的 本論文では,親子が安全・安心に過ごすことのできる岡山市の就学前親子の居場所のあり方を検討するために,岡山市の就学前の子どものいる世帯を対象に就学前親子が利用する居場所のニーズなどに関する質問紙調査を実施し,子ども虐待と子育て不安や就学前親子のニーズとの関連性について検討した。

方法 調査対象は,2019年5月現在の岡山市住民基本台帳から0歳から5歳までの子どもがいる36,742世帯から2,520世帯を無作為抽出し,同年6月7日~6月30日に郵送調査法による質問紙調査を実施した。1,275人から回答が得られた(有効回答率は50.6%)。子ども虐待意識・経験・子育て不安・居場所ニーズのスピアマンの順位相関係数を算出した。子ども虐待意識・経験については,家計状況・家族形態・子育て不安・居場所ニーズによる違いを検討するためにKruskal-Wallis検定を行った。「子どもをたたいた(経験)」を従属変数,子どもの月数・就園状況・家計状況・子ども虐待意識・子ども虐待経験・子どもの頃の虐待経験・子育て不安・居場所ニーズを独立変数とする重回帰分析を行った。

結果 「子どもをたたいた(経験)」と「子どもの頃親等にたたかれた(経験)」の相関はρ=0.295(p<0.01)で低い正の相関があったが,「子どもをたたいた(経験)」と「子どもの頃親等に怒鳴られた」の相関は,ρ=0.598(p<0.01)でかなり高い正の相関があった。余裕のある人より,普通・苦しい人の方が子どもをたたくことが多く,親等にたたかれた経験も多くなっていた。重回帰分析の結果,子どもの月数が多く,怒鳴ることに肯定的であり,子どもの頃親等にたたかれたり,怒鳴られた経験のある人ほど子どもをたたき,さらに,子育て困難感が高く,子育て相談・支援ニーズが低く,遊び場ニーズの高い人ほど子どもをたたく傾向があることが明らかになった。

結論 子どもをたたいたり,怒鳴ったりすることは体罰であり,しつけとして体罰を用いない,特に怒鳴らない子育ての方法を親子の居場所などで伝えていく必要がある。親子の居場所において,子育て不安が高く,子どもをたたく人や子どもを怒鳴る人,子どもの頃親等に怒鳴られた経験のある人,そして家計の苦しい人やひとり親家庭などを個別に把握し,寄り添っていく伴走的な子育て支援を実践するとともに,子育て支援プログラムや虐待治療プログラムなどを含む福祉サービスにつなげていくソーシャルワークに基づいた子育て支援が求められている。

キーワード 親子の居場所,地域子育て支援拠点,子ども虐待意識,子ども虐待経験,被虐待経験

 

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