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論文記事:市民後見人における受任調整の現状と後見活動時に感じる困難さを規定する要因の検討 202110-05 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第68巻第12号 2021年10月

市民後見人における受任調整の現状と後見活動時
に感じる困難さを規定する要因の検討

永野 叙子(ナガノ ノブコ) 小澤 温(オザワ アツシ)

目的 市民後見人の受任調整の現状を分析し,後見活動時に感じる困難さの内容と,困難さを規定する要因を明らかにすることを目的とした。

方法 2016年12月~2017年3月に,現任の市民後見人142名に対して質問紙調査を実施した。調査内容は,市民後見人の属性,被後見人等の概要,後見活動時に感じる困難さとした。有効回収票は113件(有効回収率=79.6%),分析対象は112件(1件辞退)であった。分析項目の独立変数は,①居所2群:「在宅,施設等」,②申立人2群:「親族(本人含),市町村長申立」,③介護度4群:「要支援1~要介護2,要介護3,要介護4,要介護5」,④受任経験:「有,無」,⑤資格所有:「社会福祉士,介護福祉士,看護師,税理士,教員,その他等の記入があった場合を有,記入なしを無」,⑥支援・監督組織の2群:「独自養成の実績がある3カ所の実施機関(2011年老人福祉法の改正ならびに,市民後見推進事業開始以前より市民後見人を独自研修プログラムで養成してきた成年後見実施機関),それ以外の7カ所の実施機関」とした。従属変数は,「活動時に感じる困難さ19項目」とし,独立変数①~⑥との関連性をみるためにχ2検定を行った。

結果 困難さを規定する要因のうち被後見人等の要件では,市町村長申立案件の場合に,「家族等との意見調整」を「困難である」と感じる傾向がみられた(p<0.05)。次に,市民後見人の要件では,受任経験がある者が「葬儀等の手配」(p<0.01),「財産の引き渡し」(p<0.05)を「困難でない」と感じる傾向がみられた。また,市民後見人を支援・監督する組織での検討では,独自養成の実績がある組織で支援・監督を受ける市民後見人は,「家族同様のかかわり」「保証人等を求められる」「家族等との意見調整」「緊急時の対応」に困難さを感じない傾向がみられた。

結論 死後事務は,1ケース1回限りの非日常的かつ個別性が高い活動であるが,市民後見人の受任経験が死後事務の手続き・手順への理解を促進し,見通しをもった活動につながると考えられた。一方,独自養成の実績がある組織で支援・監督を受ける市民後見人には,困難さを感じない傾向がみられたことから,当該機関は,受任後の市民後見人に対する継続的支援を推進していると考えられた。したがって,受任調整時には市民後見人の受任経験を考慮する一方で,支援・監督組織が市民後見人の育成・支援を通じて自らも実務経験を積みつつ,現任の市民後見人への継続的支援を推進することが,市民後見事業の普及・促進につながると考えられる。

キーワード 成年後見制度,市町村申立,市民後見人,受任調整,困難さ,成年後見制度利用促進基本計画

 

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