論文
第68巻第15号 2021年12月 わが国の労働者における新型コロナウイルス感染症の
工藤 安史(クドウ ヤスシ) 後藤 由紀(ゴトウ ユキ) 柿原 加代子(カキハラ カヨコ) |
目的 新型コロナウイルスへの感染の疑いのある労働者がいた場合,新型コロナウイルス感染症の診断に必要な検査を受けてもらうことは,事業場での感染拡大を防止するために重要である。本研究では,「新型コロナウイルス感染症に対する労働者の意識」と「新型コロナウイルス感染症の検査を受ける動機づけ」との関連性を探る。
方法 2020年9月から12月までの間に,調査を実施した。36事業場が研究に参加し,解析対象者は2,056名であった。ヘルスビリーフモデルを参考にして,「新型コロナウイルス感染症に対する労働者の意識」に関連する項目を作成し,因子分析を行った。その後,「新型コロナウイルス感染症の検査を受ける動機づけ」を目的変数,年齢,性別,勤務形態,婚姻状態,「因子分析で抽出された各因子」を説明変数とする重回帰分析を行った。
結果 労働者の意識に対して因子分析を行った結果,「重篤な健康状態になる恐れ」「偏見にさらされない」「感染拡大防止に早期発見が重要」「生活の安定」「感染リスクの高さ」という5つの因子が抽出された。重回帰分析の結果,重篤な健康状態になる恐れを認識しているほど,感染拡大を防止するために早期発見の重要性を認識しているほど,感染しても生活の安定が確保できると考えているほど,新型コロナウイルス感染症の検査を受ける動機づけが高かった。また,既婚者は,未婚者よりも,新型コロナウイルス感染症の検査を受ける動機づけが有意に高かった。
結論 「重篤な健康状態になる恐れ」「感染拡大防止に早期発見が重要」「生活の安定」という意識や婚姻状態を考慮することで,検査を受ける動機づけを高めることができる。
キーワード 検査,新型コロナウイルス感染症,動機づけ,ヘルスビリーフモデル,労働者