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論文記事:市町村介護保険者における地域密着型サービス利用の決定要因 202202-04 | 一般財団法人厚生労働統計協会|国民衛生の動向、厚生労働統計情報を提供

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第69巻第2号 2022年2月

市町村介護保険者における
地域密着型サービス利用の決定要因

金 吾燮(キム オソップ)

目的 地域密着型サービスの提供水準による市町村介護保険者の地域差を確認把握した上で,地域特性が地域密着型サービスの利用に与える影響を明らかにすることを目的とする。

方法 全国の市町村介護保険者(広域連合除外)を対象に,2018年度の「介護保険事業状況報告(年報)」と「市町村のすがた」のデータを用いて地域密着型サービスの利用に与える影響を分析する。地域密着型サービスの利用について,サービスの利用者割合が高い介護保険者(上位30%)と低い介護保険者(下位30%)を従属変数にする。説明変数は介護保険者の地域特性(8項目)と事業者参入要因(2項目),利用者要因(4項目)とし,t検定による地域差の検証および二項ロジスティック回帰分析の独立変数を抽出する。その上で,二項ロジスティック回帰分析を用いて,地域密着型サービスの利用要因を分析する。

結果 モデルの有意確率が0.00で,二項ロジスティック回帰モデルとしてふさわしいと判断された。Cox&Snellの寄与率とNagelkerkeの寄与率から,モデルの寄与率は0.16から0.21と考えられる。地域密着型サービスの利用者割合に影響を与える要因として,財政力指数(オッズ比:0.32,95%信頼区間:0.13-0.80,p<0.05),高齢者人口密度(オッズ比:0.99,95%信頼区間:0.99-0.99,p<0.01),一般病院数(オッズ比:1.04,95%信頼区間:1.00-1.07,p<0.05),一般世帯平均人数(オッズ比:0.18,95%信頼区間:0.10-0.33,p<0.01),地域の平均要介護度(オッズ比:6.68,95%信頼区間:3.77-11.85,p<0.01)が選択された。つまり,地域密着型サービスの利用率は,介護保険者の地域特性では財政状況が厳しいほど高く,事業者参入要因では高齢者人口密度が高いほど利用率が低く,一般病院数が多いほど利用率は高い。また,利用者要因の項目では一般世帯平均人数が少ないほど,地域の平均要介護度が高いほど利用率が高い。

結論 自治体の厳しい財政状況と近年の核家族化の進行による家族介護力の低下と高齢化に伴う要介護度の重度化により,地域密着型サービス提供の必要性はこれからさらに高くなると予想され,専門人材を確保できるよう地域における事業者参入が円滑に行われる環境整備が求められる。

キーワード 地域密着型サービス,介護保険サービス,利用要因,地域特性,事業者参入

 

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