論文
第69巻第2号 2022年2月 国保データベース(KDB)システムの
栗田 淳弘(クリタ アツヒロ) 戸山 久美子(トヤマ クミコ) 中村 好一(ナカムラ ヨシカズ) |
目的 レセプトに記載されている傷病名等や健診受診有無,医療受療状況等の情報と要介護状態の発生リスクの関連等を分析し,要介護の要因を明らかにする。
方法 栃木県の後期高齢者医療の対象者(観察期間中の転出者,死亡者等を除く)を対象として作成された次の3つの統計データについて考察した。①2017年度の年齢階層別の対象者の分布と2019年度末に要介護2以上となった者の割合(以下,要介護リスク)。②2017年度の健診受診者におけるBMI別の対象者の分布と要介護リスク。③2017年度におけるレセプトの傷病名や医療受療状況,健診受診有無等を説明変数,2019年度末における要介護2以上を目的変数として算出した要介護オッズ比。
結果 対象者149,034人(男性64,875人,女性84,159人)について,2019年度末に要介護2以上となったのは7,605人(男性3,009人,女性4,596人)であり,解析対象者の5.1%(男性4.6%,女性5.5%)であった。76歳以降は,男女ともに年齢が高くなるほど要介護リスクが上昇した。BMIは,低値および高値で要介護リスクが上昇傾向となった。要介護オッズ比が特に高い要因は,年齢80歳以上,認知症およびBMI20㎏/㎡未満であり,要介護オッズ比が特に低い要因は,健診を受診している者と歯科医療費が発生している者であった。その他,要介護オッズ比が有意に高い要因は,その他の循環器系疾患,COPD,その他機能低下の関連疾患,筋骨格系疾患,および入院医療費が発生している者であった。
結論 国民生活基礎調査によると,要介護の主な原因は,認知症,脳血管疾患(脳卒中),骨折・転倒とされているが,本研究においても,認知症,その他循環器系疾患,筋骨格系疾患は要介護リスクが有意に高い結果となった。歯科医療費が発生している者については,歯科受診が要介護リスクの減少と関連しているものと考えられる。また,健診受診は,高齢者においても健康維持に寄与している可能性が示された。ただし,既に心身の状態が悪化している場合,健診や歯科診療を受けられない可能性もあることから,これらの因果関係については今後も検討が必要である。本研究で利用した統計データは観察期間が短く,死亡リスクも考慮していないことから,要介護の要因分析については,今後蓄積されるデータを活用し,分析を継続していく必要があると思われる。
キーワード KDB,レセプト,健診,後期高齢者,要介護