論文
第69巻第3号 2022年3月 自治体レベルでの将来人口推計の検証國澤 進(クニサワ ススム) |
目的 日本の医療では,様々な課題が取り上げられ,将来に向けた対策が求められてきている。将来の医療需要や必要病床の推計には,地域ごとの将来の人口,特に年齢構成を考慮した将来人口の推計がその要となる。将来推計の全国人口については高い精度での推計がなされている一方で,自治体レベルでの推計値については,様々な要因で実際との差が生じやすいと考えられる。自治体レベルでの将来人口推計を利用する際に,生じ得る誤差とその傾向を提示する。
方法 2015年国勢調査における人口を実測値として,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口・世帯数データアーカイブスで公開されている自治体レベルで行われている将来人口推計と比較した。
結果 2015年実測値に対する,各推計値と2015年実測値の差の比を比較指標値1とした場合,全国レベルでは1997年当時の推計値の比較指標値1でも-0.01とほとんど差がないが,都道府県レベルでは-0.23~0.16とばらつきがみられた。比較指標値1の最も大きい奈良県において,市町村レベルでは-0.11~0.35と,さらに大きなばらつきがみられた。また,県レベルで年齢階層別にみると,-0.13~0.44と大きなばらつきがみられた。
結論 自治体レベルでの将来人口推計を応用する際には,全国レベルの推計にはない誤差の考慮が望まれる。
キーワード 将来人口推計,医療政策,地域人口,都道府県